出でよ!福島のおいしさを雄弁に語る小売り

味の社会学(第18回)

2015.02.23(Mon)菅 慎太郎

 実際、農産物に含まれる放射性セシウム濃度の検査は、例えば米(2014年産)では1072万点(福島県)にも及び、全袋検査が行われています。放射性セシウムの基準値100ベクレル/キログラムを超えるものは検出されておらず、すべてが基準値内であることが確認されています。

 農産物ではイノシシ肉、シロメバルなど基準値を超えるものが24点あります。しかし、それらは都市部の人が口にすることはほとんどない食品であり、実際には出荷規制で市場には出回っていません。これらの存在があるからといって不安を煽るのは、合理的な判断とは思えません。心理的な抵抗があるのは承知ですが、安全への取り組みが、消費者の「安心」につながってほしいと願うばかりです。

福島は「おいしい」食の宝庫

 筆者は、福島県内企業の風評被害対策の仕事をする機会がありました。具体的には、県内の食関連企業の商品改良や販路開拓を支援するというものでした。

 震災以後、福島の食品は取引が全面的に停止されたり、出荷数量が激減したり、売上が厳しい状況に置かれています。また、観光客も減少しており、市場環境が悪化しています。

 米どころであった福島は、おいしいお米があるばかりでなく、日本酒の逸品も多数存在しています。1枚ずつ丁寧に手で焼いたせんべいなど、愚直なものづくりの姿がそこにはありました。最近は食品の「安全・安心」ばかりが注目されていますが、「おいしい」という観点から福島の農産物、特産品が評価され、消費につながってほしいものです。

 また、福島県いわき市では2012年より、食の「安全・安心」を確保する取り組みや特産品のおいしさを消費者に知ってもらう「見せる課バスツアー」を行っています。いわき市の取り組みの丁寧さや基準の厳しさを参加者に伝えるこのイベントは、着実にファンを増やしています。

 消費者が産地や商品、生産者と直接触れることでしか不安が払拭されることはないのでしょう。地道な活動が実を結ぶまで懸命に取り組むいわき市の姿には、これまでの行政の枠を超えた「地域を支える使命感」を感じます。

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