地中海での難民・移民の死者数が過去最多に 国連

移民を受け入れた欧州の国々では民族間の軋轢が社会問題になっている。地中海で救助された移民を乗せた船。イタリア海軍提供(2014年8月4日提供、資料写真)〔AFPBB News

 建国記念の日に渋谷を歩いていると「中国人は日本から出て行け!」とか「移民はいらない! 日本人の仕事を奪うな!」とかいったいわゆるヘイトスピーチを繰り返している街宣団体に鉢合わせをした。こうした光景を日本で見るのも珍しくなくなった。

 個人的にはこうした人種差別的な排外主義には全く同調しないのだが、一方でその対極にある「今はグローバル化の時代、日本人はドンドン世界に飛び出て、日本への移民もドンドン増やしていこう」といった単純なグローバリズムもまた賛同できない。

 自ら積極的に海外に進出した昭和初期を除いて日本が歴史的に比較的平穏な環境を保ってこられた背景には、四方を海に囲まれ他民族との邂逅・紛争が少なかった地政学的優位性がある。そうした環境を安易に崩すことは日本社会の安定を脅かしかねない。実際、周辺諸国から積極的に移民を呼び込んだ結果、ドイツやスイスやオランダといった国々では民族間の軋轢が増して大きな社会問題となっている。

 またアジアという地勢を考えると、近年中国が周辺地域に人を大量に送り込んで自国の勢力範囲への取り込みを図る手法を活発化させており、うかつに移民規制を緩和すると日本の地方都市などはあっという間に中国に乗っ取られかねないという事情もある。

 とはいえ人口減少が始まった日本では、労働人口の維持、優秀な人材の確保、海外の成長市場の取り込み、などの観点で移民政策や海外投資政策を推進することが不可欠なのも明らかだ。

 そういう意味では一見対立をしているように見える極端な排外主義とグローバリズムの関係も、雇用や経済といった日本社会の行く末への不安から来ているという意味では根っこは同じなのではないか、と思うところである。