昨年12月からフランスではイスラム過激派によるテロが相次いで起こった。中でも今年1月7日に発生したパリの新聞社襲撃事件は世界を震撼させた。

日本は「テロに屈しない」菅官房長官、イスラム国脅迫後会見

イスラム国の人質となっている2人の日本人、湯川遥菜さん(右)と後藤健二さん(左)〔AFPBB News

 そして今回、昨年来行方不明になっていた2人の日本人がイスラム国により、命と引き換えに身代金を要求される事態に至った。ついに日本も、イスラム国の標的になった。

 イスラム過激派の中でも、今注目を集めているのがイスラム国である。

 彼らはこれまでの国際テロ組織とは異なり、国家を自称し、相応の組織、資金、軍事力などを保有している。また、彼らは明確な宗教的政治的理念を持ち、サイクス・ピコ条約に基づく現在の中東諸国の国境線を否定し、カリフ制の復活を唱えている。

 イスラム国の力の源泉とその背景、イラク国内でのイスラム国台頭の背景要因について分析し、日本としての対応について考える。

1 イスラム国の力の源泉とその背景

 イスラム国の力の源泉として、イスラム教の歴史に根ざす宗教的思想的根拠が堅固に継承されていることと、物質的なパワー、特に資金と兵員や武器の調達源に恵まれていることが挙げられる。

(1) イスラム過激思想の信奉

 イスラム国は、13世紀に遡る古い預言書を収蔵しており、その中には、北部シリアで異教徒との最終的な戦争が起こり、異教徒を敗北させるとの予言がある。

 イスラム教徒は、聖戦で死に天国に行くか、生き残って神聖な理想郷に生きるか、いずれにしても勝利者になると予言されている。この予言が、イスラム国では広く受け入れられている。

 イスラム国は、世界最終戦争のために、十字軍をシリア北部に呼び込み、予言どおり戦争を起こし勝利することを願っているとも伝えられている。

 そのために、意図的に捕虜を惨殺し、あるいはテロを起こすなど、欧米を執拗に挑発しているとの見方もある。その意味では、挑発に乗らない慎重さも必要であろう。