だから、そんな自国の政治事情からの日本への謝罪要求に日本側が何度も何度も謝ることは、不毛だという意味である。
米国も英国もフランスも植民地支配の謝罪はしない
日本の謝罪の不毛については、実は米国の別の学者も1冊の学術書で説いていた。ミシガン州のオークランド大学講師で日本研究学者のジェーン・ヤマザキ氏が2006年に出版した『第二次世界大戦への日本の謝罪』と題する書である。
ヤマザキ氏は日本現代史研究で博士号を得た女性学者で、日本での研究や留学の体験も長い。日系ではない欧州系米国人だが、日系人と結婚したため、ヤマザキという名になったのだという。
ヤマザキ氏は同書でまず一般論として「主権国家が過去の自国の間違いや悪事を認め、対外的に謝ることは国際的には極めて稀だ」と述べる。
国家が過去の好ましくない行動を謝罪しない実例として、「米国による奴隷制やインディアンの文化破壊、フィリピンの植民地統治、英国によるアヘン戦争、インド、ビルマの植民地支配」などを挙げていた。
そして「現代世界では国家は謝罪しないのが普通であり、過去の過誤を正当化し、道義上の欠陥も認めないのが一般的だ」と記していた。
確かにフランスがベトナムやカンボジアを植民地にしたことに「おわび」を表明したという話は聞いたことがない。同様にオランダがインドネシアを植民地支配したことへの公式謝罪というのもないのだ。
またヤマザキ氏は、もし国家が自国の過去の行為を謝罪すれば、次のような弊害が起きるとも論じるのだった。
「過去の行動への謝罪は国際的にその国の道義的な立場を低くし、自己卑下となる」
「国家謝罪はその国の現在の国民の自国への誇りを傷つける」
「国家謝罪はもう自己を弁護できないその国の先人と未来の世代の両方の名声を傷つける」