「朝日新聞」の慰安婦報道について検証する7人からなる第三者委員会の報告書が、12月22日に公表された。紙面5ページに及ぶ長大な報告書である。最後のページには、委員長の中込秀樹元名古屋高裁長官を除く6人の委員の個別意見が掲載されている。この中には非常に興味深い意見が述べられているものもある。
角度をつけ過ぎる報道
委員の1人である外交評論家の岡本行夫氏は、同委員会のヒアリングの中で「何人もの朝日社員から『角度をつける』という言葉を聞いた。『事実を伝えるだけでは報道にならない、朝日新聞としての方向性をつけて、初めて見出しがつく』と。事実だけでは記事にならないという認識には驚いた」と語り、その結果、「何の問題もない事案も、あたかも大問題であるかのように書かれたりもする」と指摘している。
その悪弊の1つが岡本氏も指摘するように、朝日の大誤報となった福島第一原発の事故の際の吉田昌郎所長の調書問題だ。同紙は、「東日本大震災4日後の2011年3月15日朝、福島第一原発にいた東電社員らの9割にあたる約650人が吉田所長の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発に撤退した」としたとする記事を掲載した。だが当の吉田所長らは、「逃げることなど考えたこともない」「福島第二原発への退避は正しかった」という趣旨の証言をしており、「命令違反の撤退」という朝日の記事は大誤報であることが明確になった。
この問題で言えば、「角度をつける」というのは、「東電は無責任な会社」「逃げようとした」という朝日の「そうであってほしい」という願望から出発した記事だということである。
もちろんどの新聞にもそれぞれの「角度」というものがあるはずだ。ある問題を記事にするかしないかは、それぞれの新聞の判断であり、そこにはおのずとその新聞の「角度」が反映される。