森と牛と人の循環「森林ノ牧場」

「森林ノ牛乳」が生まれるところで牛に舐められる

2010.08.30(Mon)前田せいめい

 東京からでも新幹線を使えば2時間弱という手軽さもあって広い地域からの来訪があり、中にはソフトクリームを目当てに繰り返し訪れる人もあるらしいが、地元の子どもたちも多くやって来るという。

森林ノ牧場 那須/前田せいめい撮影

 「那須」と言えば「牧場」という連想は単純に過ぎるだろうか、地域の子どもであれば牛はある程度身近な動物だろうと思いきや「意外とそうでもないです」。

 兼業農家であれば農作業に携わるのはおばあちゃんで、自分の家の畑に行ったことがない、牛に触ったことがないという子も多いらしい。

 普段のわれわれの生活はすでに自然や、ほかの命から分断されてしまっている。それは都市部に限らず、以前は里山と密接につながりながら日常が営まれていた地域でもそれが進んでいるようだ。

森林ノ牧場 那須/前田せいめい撮影

 自然の循環、命の循環の中にある自分を再発見する。牧場を訪れた人がそのことに気づいてくれることを櫛田さんは願っているし、そのことに気づいたとき、森林ノ牧場で牛と触れ合うことに「観光牧場」とは違う価値が見出せるのかもしれない。

 それが熊野会長の言う「無形性の価値」というものなのだろう。

 ところで「森林ノ牛乳」である。

 牛乳好きの人のブログなど読んでみると評価が高いのはもちろんだが、草の味を感じる人もいるらしい。

 冬に訪れたときには草の味は感じなかった。このときは時期的に飼料は干草やサイレージだし生の草の味は感じなくて当然だなと自分を慰めたのだが、今回はリベンジとして内心密かに期するものがあった。

森林ノ牧場 那須/前田せいめい撮影駐車場の片隅に設置された消毒槽。口蹄疫の問題はひとまず収束したが、予防措置は今後も続けるそうである

 タクシーを降りてカフェに入り、来訪の旨を告げて取り次いでもらう。櫛田さんが現れるまでの間に小瓶を買って飲んでみた。草の味は感じられなかった。

 ただ前回よりもずいぶんとさっぱりした印象だったので櫛田さんに聞いてみると、乳脂肪率を測ると冬は5%近くなるところ夏は3~3.5%くらいとのこと。

 仔牛も夏はさっぱりしたものがいいんだろうねえとスタッフの間で冗談を交わしたりもするらしいが、もちろん本当は季節によって草の水分含有率や組成が変化することによる味や口当たりの違いであり、そうした違いを違うまま商品として提供しているということである。

 味蕾はどうやら磨り減ってしまったようだが、濃さの違いが分かる程度の感覚はかろうじて残っていたらしい。ほんのちょっと慰められた気がすると同時に、牛乳で季節のサイクルを味わう妙に思いをいたすのであった。

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