韓国の政界で「憲法改正」論議が浮上してきた。実現可能性はまったく不透明で、韓国内でも「どうして今なの?」という声も多いが、「改憲を推進する国会議員の会」には議席数の過半数を超える与野党議員が名を連ねる。
朴槿恵(パク・クネ=1952年生)大統領は「経済活性化が最優先」と「経済」を前面に押し立てて、政局の波乱要因にもなりかねない改憲論を抑え込む構えだ。
「経済」に59回も言及した大統領施政演説
2014年10月29日。朴槿恵大統領は、国会で施政演説をした。2015年の予算案について国会で説明することが主な目的の「大統領施政演説」だが、毎年大統領が演説するわけではない。
首相が代読する例が多く、大統領就任後2年連続して国会で演説したのは朴槿恵大統領が初めてのことだ。
事前に準備していた演説内容はA4判用紙で18枚相当。この中で大統領は「経済」に59回も言及した。「経済、経済、とにかく経済に集中したいというのが大統領の意向」(韓国紙デスク)なのだろう。
というのも、米国では経済の先行きに多少明るさが見えてきたものの、世界的には景気回復が遅れている。これが輸出依存度が高い韓国経済を直撃して、経済の低成長が続いている。急速に進む高齢化や、産業界のけん引役だったサムスン電子と現代自動車の快進撃が止まるなど、経済情勢は先行き不透明で、「経済活性化」を何としても実現したいとの思いであることも当然だろう。
韓国では4月のセウォル号事故以降、調査委員会の構成や関連法案の処理をめぐって与野党の対立が激化し、国会は空転を続けた。
朴槿恵大統領は、予算案だけでなく、経済関連法案の迅速な処理を、演説を通して国会に強く求めたのだ。
野党党首から飛び出した思わぬ発言
同じ日、朴槿恵大統領は国会内で与野党指導部と会談した。経済関連法案の処理などを直接与野党指導部に求めたのだが、この会談で野党の新政治民主連合(民主党)の党首である文喜相(ムン・ヒサン=1945年生)党非常対策委員長から思わぬ発言が飛び出した。
「大統領が就任されてから3年が過ぎると憲法改正論議は難しくなる。ひとまず論議を始めるべきではないか」
「・・・」
大統領は、これに対して特にコメントしなかったという。