鮭(シロザケ)の成魚(画像提供:牧口祐也助教)

 秋、山の幸は実り、海の幸は富む。

 鮭の旬も秋だ。母なる川を出てから3年ないし4年。海をめぐっていた鮭たちが秋になると故郷の川に帰ってくる。この旬の鮭を人は「秋鮭」と書いて「あきあじ」と読んだ。秋の味が鮭とは、いかに日本人の鮭との関わりが深かったかが読み取れる。

 そうした日本人の鮭との関わり合いにも、長い時代の中では変化がある。自然の中で生きる鮭から恵みをもらうという立場から、人が手を加えることで鮭から恵みをもらうという立場に変わってきたのだ。

 今回は、日本人と鮭の関わり方を長い目で見てみたい。前篇では、どのように日本人が鮭に頼ってきたのか、その歩みを見ていく。鮭を人手で増やすようになった経緯を追っていきたい。

 後篇では、鮭の研究を行っている日本大学生物資源学部助教の牧口祐也氏に話を聞く。牧口氏は、鮭にデータロガーという計測機器を装着させることで、鮭の自然状態を観測し、資源確保などに役立てようとしている。長い時間の中で、今後、日本人と鮭の関係はどうなっていくべきか聞いてみた。