「日米欧、金利低下が連鎖」(2014年8月16日付「日本経済新聞」)
ドイツの長期金利(10年物国債利回り)が初めて1%を割り込んだのに続き、日本の長期金利も1年4カ月ぶりに0.5%を下回ったことから、「世界経済の日本化が進んでいる」との懸念が高まっている。
一方、リーマン・ショック後の世界を牽引してきた中国経済も、7月の新築住宅物件価格が北京・上海・広州など主要都市で下落するなど、かねて警戒されてきた「不動産バブル崩壊」が現実味を帯びてきており、「世界経済は厳しい逆風に直面している(カナダ財務相)」との認識が広まりつつある。
資本主義の死期が迫っている?
このような世界経済の状況について、『資本主義の終焉と歴史の危機』の著者である水野和夫・日本大学教授は、「資本を投下し利潤を得て資本を自己増殖させることが資本主義の基本的な性質であるが、利潤率(国債利回り)が極端に低いということは資本主義が資本主義として機能していない兆候である」として「資本主義の死期が近づいているのではないか」と警告を発する。
そもそも「資本主義」という言葉は19世紀中頃から英国で使われ始めたと言われている。
19世紀中頃は、重厚長大産業の勃興期である。この時期に、巨大資金を確保するためこれまで市場化されていなかった生産要素(土地・労働)が強引な形で流動化させられた。そのことにより、労働者をはじめ一般の人々が将来の見通しを失い「根無し草」化するなどの弊害が一気に噴出した。そこで、マルクスは『資本論』を出版してその問題点を鋭く追及した(第1巻の刊行は1867年であり「資本主義」の命名者はマルクスかもしれない)。
リーマン・ショック以降、世界の市場参加者が疑心暗鬼になり、市場の信頼が失われたままの状態が続いている。人や将来に対する信頼が欠落したら経済活動はうまくいかない。各人が自己防衛のために合理的に行動することで社会全体の厚生が下がる「合成の誤謬」の罠に陥ってしまうからだ。