中小企業の取材で全国を回っていると、地方経済の衰退ぶりを痛感させられる。厳しい環境の中で業績を伸ばしている中小企業も存在する。しかし、残念ながらそういう企業はごく一部である。地方全体として見ると、人口減少、高齢化という巨大な波には抗いようがないようにも感じられる。

なぜローカル経済から日本は甦るのか』(冨山和彦著、PHP新書、842円、税込み)

 そんな中で、地方再生に焦点を当てた政策提言の書、『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(PHP新書)が発行された。著者は、企業再生のスペシャリストとして知られる経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO、冨山和彦氏だ。

 冨山氏によれば、これからの日本の成長はローカル経済圏にかかっているという。日本の会社の大半は、実はグローバル経済圏とは無縁である。だから日本の成長を論じるのなら、全国各地の小さな市場で勝負している中小企業に目を向けるべきなのだ。

 冨山氏はさらに発想の転換を促す。これまで様々な地域振興策や経済活性化の方法が叫ばれてきた。その際、「弱者」である中小企業は基本的に守られるべき存在だった。しかし、冨山氏は、滅んで然るべき企業に救いの手を差し伸べる必要はないと言い切る。「生産性の低い企業には穏やかに退出してもらい、事業と雇用を域内の生産性の高い企業に滑らかに集約すべきだ」と言う。

 これは、いかにも冷酷で厳しい処置のように思える。だが実際に地方経済の惨状を理解すると、実は非常に現実的で、理に適った主張であることが分かる。

 ただし、業績が低迷していても、なんとか打開策を講じてビジネスを継続したいと思っている中小企業は多い。そういう企業はどうすればいいのだろうか。冨山氏に話を聞いた。

生産性の低い会社に存在価値はない

──地方の中小企業の現状をどのように見ていますか。

冨山和彦氏(以下、敬称略) おおざっぱに言うと、地方企業の平均的な経営レベルってかなり低いんですよ。残念ながら経営してないに等しい会社がごまんとある。