アップル、出版社に見返りを要求、アマゾンも追随
そうしたタイミングで、アップルがタブレット端末「アイパッド(iPad)」とともに現れ、大手出版社と契約を結んでしまった。
記事によると、この時アップルが販売代理店モデルを受け入れる見返りとして要求したのが、「ほかの小売業者が価格をアップルよりも安く設定することを出版社は許可してはならない」とする条件だ。
言い換えれば、「アイパッドで商売したい出版社はアップル以外の業者とも販売代理店契約を結び、価格を管理しろ」ということになる。
これによりアップルと契約を結びたい出版5社は、アマゾンとの契約の見直しを余儀なくされた。結果として、アマゾンはやむなく5社と代理店契約を結んだ。アイパッドという思わぬライバルが登場したことへの脅威や出版社の圧力に屈したという格好だ。
しかしこの時、アマゾンも同様に「ほかの小売業者にはアマゾンよりも良い条件でコンテンツを供給してはならない」という条項を盛り込んだ。こうしてアマゾンは大手5社とだけ販売代理店契約を結び、それ以外とは卸売り契約を継続することになった。
「既に市場には悪影響が表れている」
以上がニューヨーク・タイムズの記事の概要だ。司法長官はこれらの契約はいわゆる「最恵国待遇(MFN:Most Favoured Nation)」に当たると考え、書かれていることが事実であるかを確かめるべく予備調査を行った。
この最優遇条項があることで、出版社はアップルやアマゾン以外の業者に両社よりも安値で販売できなくなる。もしそうすれば両社の価格も自動的に下がることになる。こういう状況では自ずと価格引き下げのインセンティブがなくなり、市場で価格が統一されていくことになる。
司法長官はこれまでの調査で、アマゾン、アップル、米ボーダーズ、米バーンズ&ノーブルといった大手書店の書籍コンテンツ価格を調べた。
結果はどれもが同じで「アップルとアマゾンが最優遇条項付きの契約を既に結んでおり、その悪影響が市場に表れているようだ」と結論づけた。
司法長官はアップルとアマゾンに宛てた書簡で次のように述べている。
「アップルのアイパッドは、電子書籍リーダー端末市場で大きなシェアを取ることだろう。アマゾンとアップルのシェアを合わせると、米国電子書籍市場にもたらす影響は計り知れない。我が国の独禁法では最優遇条件自体は違法ではないが、適法であるとも言えない」
「特に大手の2社にこの条件が与えられた場合、それは価格協定につながることになり、消費者の利益が損なわれる恐れがある」
