7月16日、突如中国は、約2か月前から南シナ海のパラセル(西沙)諸島付近で行っていた掘削活動を前日までに完了したと発表した。当初は8月中旬まで継続としていたから、筆者にはちょっとした驚きだ。
中国はなぜ今の時点で、あれほど強硬だった姿勢を転換したのか。それとも、全く転換していないのか。
南シナ海クロノロジー
ことの発端は5月2日に中国石油天然気集団(CNPC)が巨大オイルリグ(石油掘削装置)をパラセル諸島付近に持ち込んだことだ。同事件の経緯は「南シナ海に回帰する米軍と中国の逆襲:中国株式会社の研究246」に詳しく書いたので、ここでは繰り返さない。
代わりに5月以降の南シナ海での主要な動きを時系列にまとめてみた。いずれにせよ、中国側は既に掘削装置を撤収し、ベトナムが主張する排他的経済水域(EEZ)の外側に移動させたという。
最終的には中国領海内の海南省沖に向かうらしい。こうした一連の動きは何を意味するのだろうか。
5月2日 中国、西沙諸島付近に巨大オイルリグを搬入、試掘を開始
5月7日 ベトナム、「中国船がベトナム船舶に体当たりした」と発表
5月10日 ASEAN(東南アジア諸国連合)外相会議、南シナ海情勢につき「深刻な懸念」を表明
5月13~14日 ベトナム国内で大規模な反中暴動発生、中国人らが死傷
5月18日 中国、対ベトナム交流計画の一部停止を発表
5月26日 ベトナム漁船、中国漁船に体当たりされ沈没
6月10日 国務省次官補、中国に対しオイルリグの撤収を要求
6月下旬から7月上旬 中国当局、トンキン湾などでベトナム漁民計13人を拘束
7月9~10日 米中戦略経済対話(北京)
7月10日 米上院本会議、中国非難決議を採択
7月16日 中国、オイルリグと艦船を撤収したと発表