中国側の反応

ベトナムの製鉄所で暴動、中国人1人死亡 100人負傷

ベトナム南部ビンズオン(Binh Duong)省の工場周辺で行われた反中デモ〔AFPBB News

 中国はなかなか本心を見せない。過去数日間に中国側が発表した内容はいずれも微妙である。

●6月下旬~7月初旬に拿捕した漁船2隻のベトナム人漁民13人を解放(7月15日報道)
●米国は南シナ海問題に介入せず、問題解決は関係諸国に任せるべし(7月15日、中国外交部声明)
●西沙諸島は中国の争う余地のない固有の領土だ(7月16日、中国外交部報道官)

●ベトナム側が中国企業の活動を道理なく妨害したことに断固反対する(同上)
●(掘削の)目的は予定通り円滑に達成され、石油とガスが発見された(同上)
●(今回の活動完了は)いかなる外部要因とも関係がない(同上)

 以上の発表とそのタイミングはいかにも面白い。中国なりに事態収拾に動いているようで、実に興味深いではないか。

 最後に、陳腐な結論に聞こえるかもしれないが、中国側の思惑に関する筆者の(相変わらずの)独断と偏見をご披露しよう。やはり、中国外交は強かである。

1、戦略経済対話で中国は米側の要請を受け入れ、オイルリグの撤去に同意した。

 ただし、中国側にもメンツがある。8月まで継続するとしていた作業を中断する以上、何らかの成果が必要だ。外交部が「目的が達成」され、「石油・ガスが発見」されたと発表したのは至極当然だと思う。

2、中国は南シナ海での領有権主張を変えるつもりはない。

 中国側が従来の立場を繰り返していることからも、「米側の圧力に屈した」などという幻想を持ってはならない。結局、中国はベトナムがEEZだと主張する海域で、ベトナムから反発を受けながらも、掘削作業を最後まで続けたではないか。中国は今後も実績を積み上げ、中国側主張の既成事実化を図るだろう。

3、今回中国は悪化した国際政治環境の中で戦術的立て直しを図ったに過ぎない。

 中国指導部首脳もようやく最近の中国外交の失敗を認識し始めたのか。形勢不利と見た中国側が、ここは米国のメンツを立てて恩を売り、将来の外交的攻勢に向けた態勢立て直しを図ったのだろう。

 米外交にとっては戦術的勝利かもしれないが、これで今後の形勢が変わることはないと見る。

4、米国とその友好国・同盟国を分断し、自己の影響力拡大を図る中国の長期的戦略は変わらない。

 さすがは中国、転んでもただでは起きないということだ。日本も最近の対外広報面での戦術的成功を喜んでばかりいては駄目だろう。中国は既に次の一手を真剣に考えているに違いないのだから。

 8月10日にミャンマーで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(AFR)、11月に北京で開かれるAPEC首脳会議に向けた外交戦は既に始まっている。