日本では権力という言葉にアレルギー反応を示す人が少なくない。「権力志向」「権力濫用」「権力闘争」など、権力と結びつく言葉には、確かにあまり近寄りたくないネガティブなイメージがついて回る。ましてや「独裁」なんてとても受け入れられないという人がほとんどだろう。

独裁力 ビジネスパーソンのための権力学入門』(木谷哲夫著、ディスカヴァー・トゥエンティワン、1620円、税込)

 しかし、本書は独裁を肯定する。今こそ日本企業には独裁が必要だと唱えるのだ。

 著者は、京都大学でイノベーションを中心テーマに経営学の教鞭を執る木谷哲夫氏。木谷氏は本書で、歴史的な人物や国内外の経営者の事例をもとに独裁の方法を解説する。権力を手中にした人は、どうすればその地位を確固たるものにし、組織を思うままに動かせるのか。古今東西の独裁者が実行している“禁断”のセオリーを木谷氏は解き明かす。

 なぜいま、日本企業には独裁が必要なのか。果たして独裁によって組織は強くなるのだろうか。木谷氏に話を聞いた。

戦略は「実行」されなければ意味がない

──木谷さんは、かつてマッキンゼー・アンド・カンパニーで約10年にわたり経営コンサルタントを務めていたそうですが、当時、日本企業の問題点をどう見ていましたか。

木谷哲夫氏(以下、敬称略) 私たちがコンサルティングをして導き出した戦略を会社が実行しようとすると、最後は、その会社に独裁力があるのかという問題にたどりつくんです。

 オーナー系の会社ならば基本的に社長が1人で全部決められます。ところが、普通の大企業相手のコンサルでは、現場の責任者などミドルマネジメントを相手にすることが多い。すると、検討につぐ検討が重ねられて気がついたら1年も検討し続けている、みたいな事態がよく起きます。結局、実行できないで終わってしまうわけです。