前述のガブリエル大臣によれば、国民のTTIPに対する不信が募るのは、交渉が密室で行われているからだとして、なるべくガラス張りにするように心がけるそうだ。そして、交渉を詰め、メリットとデメリットをはっきりさせ、EUの利害を損ねないような原案をまとめ、それを国民に提示するという方向で進めるつもりであるという。
彼の意見では、今はデメリットばかりが独り歩きしており、メリットが取り上げられていない。例えば、現在EU内で重大な問題になっている失業率の改善が見込まれれば、少しは公平な見方が為されるのではないかと言う。彼は、公言はしないが、あきらかにTTIP推進派だ。
ただ、国民は、米国がTTIPをこれほど熱心に進めてくるのは、自分たちが得するからだろうと勘繰っている。双方が得をすると言われても、なかなかその気になれないのが、現在のドイツ人の心境だ。
そのうえドイツには、自然や環境に熱狂的にこだわる原理主義者のような人が多い。彼らにとっては経済よりも何よりも自然。だから、遺伝子トウモロコシと塩素鶏には反対。だから、TTIP絶対反対という理屈だ。
そして、その声はいつもとてつもなく大きい。だから、議論をガラス張りにして、国民を論争に巻き込むと、おそらくTTIPは締結できなくなるのではないか。
これからガブリエル大臣がどのように交渉を展開し、どの程度ガラス張りにし、いかにして国民の意見を纏めていくのか、それを見るのが楽しみでもある。