週刊NY生活 2014年4月12日485号

 不法移民に対して緩和措置を取っているオマバ政権になってからも国外退去処分となった不法移民は減るどころか、むしろ増えていることがこのほど明らかになった。

 国外退去者数は2007年に約30万人だったが、ブッシュ政権の最後の年である08年にメキシコとの国境警備を厳しくしたことで約38万3000人に増えた。09年のオバマ政権になってからも毎年増え続け、12年には40万9224人を記録した。13年には約37万人に減少したが、07年の30万人に比べると依然、高い水準を保っている。

 内訳で見ると、国境での強制送還が大きく増加しており、また審問なしに強制送還されるケースも増加している。統計はニューヨークタイムズ紙が移民関税執行局(ICE)と国境警備隊の記録をもとに集計した。

 オバマ大統領は2008年の大統領選で、子供が学校から家に帰ると親が移民局に連れ行かれているなど不法移民取り締まりは厳しすぎるとして批判、公約のひとつに包括的移民政策の改革を掲げ、中南米系の大きな支持を得て当選した。

 オバマ政権は、犯罪に手を染める不法移民に対しては厳しく取り締まるが、学生あるいは家族を養うために真面目に働いている不法移民に対しては緩和政策を取っているとしているが、実際には重大な違反や犯罪よりも軽微な違反や違反なしでの強制送還が増えている。

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 2009年から13年までに国外退去処分となった約200万人のうち約3分の2が交通違反などの軽微な違反、もしくはまったく違反や犯罪がない人だった。麻薬犯罪などの有罪判決を下され追放されたのは、約20%(39万4000人)で、残りは自主的退去などだった。

 最も増加率が高かったのは交通違反を理由としたもので、ブッシュ政権の最後の5年間(2003年~08年)で4万3000人だったが、オバマ政権下の5年間(2009年~13年)で19万3000人と4倍に増えた。また、不法再入国による強制退去も同期間で約3倍の18万8000人になっている。

 オバマ政権は、共和党議員らの批判にあいながらも2012年春、現在30歳未満で16歳以前に入国し、高卒以上であれば国外退去の対象から外すという新移民法政策「ドリーマーズ」を発表した。これにより最大80万人が恩恵を受けると推定されている。

 米国内の不法移民は推定150万人。強制退去となる不法移民の大部分は35歳以下のメキシコ人男性。

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