昨年の日本の中国向け輸出(中国側統計)は通年ベースで前年比マイナス8.7%と、一昨年(同マイナス8.6%)に続いて2年連続の減少となった。このデータを見て、尖閣問題を巡る日中関係の冷え込みが鮮明に表れたと理解している人が多いはずだ。

 しかし、データの変化をよく見ると、対中輸出はすでに底を打って回復に向かっている。しかも、対中輸出が2年連続で減少していたのは中国経済の減速が主因であり、尖閣問題の影響はそれほど大きくなかったように見える。どうしてそう言えるのだろうか。

リーマン・ショック後の強過ぎた景気刺激策の副作用

 中長期的に中国向け輸出の推移を見ると、1999年以降2008年まで、年平均18.2%という驚異的な高い伸びが続き、輸出額はその10年間で約4倍になった。そこに2008年9月、リーマン・ショックが起きた。2009年はリーマン・ショック後の景気後退の影響で前年比マイナス13.1%と大幅な減少となった。

 しかし、中国は世界経済の長引く停滞を尻目にたった1年で2ケタ成長に戻ったため、2010年の中国向け輸出は再び前年比35%増という非常に高い伸びとなった。この中国経済の急回復が世界中の注目を集め、中国の国際社会におけるステータスが大幅に向上した。

 しかし、その急回復が中国経済に大きな代償を払わせることになった。

 中国政府はリーマン・ショック後の深刻な景気後退から急速な経済回復を実現するために、なり振り構わず極端な経済刺激策を実施した。このため、2009年第4四半期に2ケタ成長を回復した後、景気は過熱気味となり、2010年にはインフレに直面した。

 同時に、闇雲に投資を拡大した副作用で、鉄鋼、アルミ、ガラス、造船、自動車、太陽光パネルなど幅広い分野で、適正規模を大幅に上回る生産設備を抱えることになり、設備の稼働率が低下し、業績が悪化した。これが過剰設備問題である。

 それに加えて、地方政府が融資プラットホーム(融資平台)と呼ばれる資金調達の仕組みを利用して不動産開発投資、インフラ建設を拡大し、その一部が不良債権化した。

 このように中国はリーマン・ショック後に世界中の注目を集める急速な景気回復を実現したが、あまりにも強過ぎた景気刺激策が副作用を生み、2010年以降、インフレ、過剰設備、不良債権の3つの難題に同時に直面することになった。

 それらの問題への対策として、金利の引き上げ、融資プラットホームに対する管理強化、金融機関の貸出に対する監視強化といった政策が取られた。

 その影響で、2010年以降、中国経済は再び下降局面に入り、経済成長率は、2010年の10.4%から、2011年は9.4%、2012年は7.7%と低下を続けた。2013年は1~9月の累計で7.7%と、下げ止まりはしたが、前年並みの成長率にとどまっている。

底を打った日本の中国向け輸出

 このような経済成長の伸び鈍化を背景に、日本の中国向け輸出も伸びが低下した。2010年には35%という高い伸びを示したが、2011年は前年比10.1%増にまで伸びが低下し、2012年、2013年は冒頭に示したように2年連続の減少となったのである。