急いで雇用率を上げることより丁寧に進めることが必要

 2018年に向け、精神障害者の雇用に対する機運は高まってくることが予想される。企業もCSR(Corporate Social Responsibility: 企業の社会的責任)意識が高まる中で、雇用率を上げようと正面から取り組む動きも増えるだろう。ただその中で、急いで数を増やすことに意識を向けすぎるのも良くないようだ。

 「今までマッチングを行ってきた中で、一度採用したけれども上手くいかなかった企業が再度チャレンジするケースは非常に少ないんですね。ですから精神障害者の雇用については、急いで数を追いすぎず、とにかく丁寧に進めていくことが重要だと思います。あくまで企業と障害者の方のニーズを汲み取ることが最優先。まずは丁寧に裾野を広げていくことが先々の雇用創出につながると考えています」(同)

 まずは求職者の障害特性を理解し、それに応じた雇用制度や配置を柔軟に行うこと。そして、就業後のフォロー体制を確立すること。精神障害者の雇用を行う上では、これらに一つひとつ丁寧に対応していくことが不可欠だ。雇用率が取り沙汰される部分はあるが、しばらくは着実に進めることを優先すべきなのかもしれない。

 川上さんが就業後のスタッフの様子を採用企業に聞くと、採用の前は「マネジメントが難しいのでは」「きちんと働けるか不安」といった懸念を抱いていた企業も、採用後は「問題なく働いてくれています」と返答するという。

 ハンディを持ちながらも、1人の従業員として普通に働いている職場。そのような例が今後さらに増えるよう、今後様々な機関の努力が必要だろう。