日本の一部企業で社員や店員の過重労働が社会問題化しているが、実は近年、米国企業の中にも過酷な労働環境が批判される会社が少なくない。

 その1社として名前が挙がっているのがネット通販最大手のアマゾン・ドット・コム(本社ワシントン州)である。問題視されてからしばらく経つが、最近は訴訟問題も浮上している。世界的大企業に成長した裏に、社員・従業員の多大な犠牲があるとの指摘もある。

欧米大手メディアが「奴隷収容所」と報道

米アマゾンの独流通施設で労働者いじめか、警備会社との契約を解除

ドイツにあるアマゾン・ドット・コムの流通センター〔AFPBB News

 世界中で事業展開しているアマゾンは書籍やDVDはもちろん、近年は紙おむつから紳士靴まで小売りの総合デパートと呼べるほど商品の多様化が進み、世界の至る所に巨大倉庫を置いている。

 そこでの労働環境が欧米メディアの批判の的になっており、「スレイブキャンプ(奴隷収容所)」と形容するメディアもあるほどだ。今月も英BBCの記者がオトリ取材で従業員として潜入し、その実態を報道した。

 アダム・リッター記者(23)はウェールズ南部スウォンジ市にあるアマゾンの倉庫で、夜間のシフトに入って「ピッカー(棚から荷物を出す係)」として働いた。

 80万平方フィート(約7万4000平方メートル)という広大な敷地で、33秒間に1個というスピードで商品を拾い上げていく。常に時間との闘いで回収が遅いとブザーが鳴る仕組みだ。

 「従業員はまるで機械。スキャナーをオンの状態にしたまま歩き続け、ロボットのように作業をしなくてはいけない」

 夜間シフトでリッター記者は約17キロを歩いたという。番組に登場した大学教授は「この労働環境では精神的、または肉体的に体調を崩す可能性がある」と述べている。

 また英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙も過去に同様の突撃リポートを掲載しており、従業員は広大な倉庫内を多い日で24キロも歩かされたと記している。さらに「3ストライク」というルールがあり、作業規則を3回破ると解雇される非情さがあると書いた。

 作業効率向上のルールとして理解できるが、解雇が日常茶飯事の欧米であっても冷酷であると結論づけている。

 今年9月には、米ペンシルベニア州で従業員がアマゾンを相手どって集団訴訟を起こした。というのも、従業員が昼休みに倉庫外に出る時、商品を持ち出していないかを調べる探知機を通過する必要があるからだ。長蛇の列に並ぶと、休み時間が大幅に短縮されてしまう。