マット安川 ゲストに佐藤優さんを迎え、日本の外交政策のほか、ロシアの最新情報から北方領土問題の展望まで、幅広くお聞きしました。

中国の脅威に立ち向かうため韓国に譲歩し連携せよ

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:佐藤優/前田せいめい撮影佐藤 優(さとう・まさる)氏
元外交官、文筆家。インテリジェンスの専門家として知られる。第38回大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞した『自壊する帝国』の他、『獄中記』『国家の罠-外務省のラスプーチンと呼ばれて』『3.11 クライシス!』『世界インテリジェンス事件史』など著書多数。『超訳 小説日米戦争』が近日刊行予定(撮影:前田せいめい、以下同)

佐藤 日米関係を基軸にする、ロシアとの関係を調整する、中国の脅威にどう立ち向かうかを根本に外交を組み立てる、といった部分において、安倍政権はよくやっていると思います。ただ問題は、韓国との関係を改善できていないことです。

 二正面、三正面作戦じゃダメなんです。ロシアは北方領土を、韓国は竹島を不法占拠していますが、両国がそれ以上の領土を追加的に奪取することは、少なくとも近未来にはありません。

 しかし尖閣諸島に関しては、このまま放っておいたら本当に中国軍が出てきます。そうなると鍵になるのは韓国です。中国と韓国の関係にくさびを打つこと、両国を切り離すことが急務だと思います。

 韓国と日本の間には確かに従軍慰安婦問題も竹島問題もある。最近では戦時中に働いた韓国人の補償問題とかも出てきていますけど、それらは根本的な問題じゃないんですね。少なくとも韓国と日本は、選挙で政治指導者を選ぶ民主主義体制の国です。

 しかし中国は選挙もせずに権力者が勝手にやりたい放題のことをやる国ですから、根本的に違う。中国に立ち向かうには、まず韓国ときちんと連携しないといけません。

 いろいろなことを先送りにする、脇に置いておく、妥協する、ということが今は必要だと思います。真の外交とは、仲の悪い相手と上手に付き合って我が方に有利な状況を作ることであり、そのためにはどこかで必ず譲歩しないといけないのです。

尖閣で衝突したら日本は勝つ。しかし国際的に不利な立場に

 中国は経済に変調をきたしていますし暴動も頻発していますが、権力はきちんと成立しています。上がこれをやると言えば末端まで浸透する。しかも核を保有しています。構造的問題を抱えているからといって軽視してはいけません。

 中国が大国の地位から転がり落ちることはないし、自滅することもない。それを前提にこの国とどう対抗していくかを考える必要があります。

 先の米中首脳会談で、習近平(中国国家主席)は尖閣問題をめぐる発言で失態を呈したと言われますが、私の評価は違います。

 アメリカがこの問題について繰り返し言っているのは、尖閣諸島は日本の施政下にある、われわれは主権については中立の立場であるということです。日本にとって重要なのは主権なのですが、アメリカはそれを認めていない。中国にしてみれば、それを確認できただけで十分な成果を手にしたと言えるのです。