マット安川 ゲストにTPP参加交渉会合の現場を取材したアジア太平洋資料センター・内田聖子事務局長を迎え、参加交渉の取材報告や、TPPのメリット・デメリットの検証など、詳しく伺いました。

TPP参加で日本の食料自給率はさらに低下、国の体をなさなくなる

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:内田聖子/前田せいめい撮影内田 聖子(うちだ・しょうこ)氏
アジア太平洋資料センター(PARC)事務局長(撮影:前田せいめい、以下同)

内田 TPP(環太平洋経済連携協定)について、私は菅(直人)元首相が話を持ち出してからずっと反対してきました。といっても、最初は私たちにも分からなかったんです。NGO(非政府組織)として貿易の問題を追ってきましたが、TPPなど聞いたこともなかった。

 そこで調べていくと、これは自由貿易の推進で、結果的に格差や貧困を広げることにつながり、日本のさまざまな素晴らしい制度や文化などを壊す危険があるということが分かってきた。

 それでいろんな方々、農業だけではなく医療関係者や食の問題にかかわる人たちが横につながって反対してきました。

 TPPに反対する最大の理由は、極端な自由化、関税はすべてゼロにするというところにあります。例えば、日本人の主食であるコメの関税を全部取っ払ってしまえば、食料自給率はいまよりも落ち込みます。

 国が食料自給率をなかば放棄し、一国が自分の国の国民を食べさせられる力を持たなかったら、それは国の体をなしていないですよね。食料というのは最も大切な安全保障ですから。これは農民の既得権益などの話ではないんです。

 そもそも、日本の政府や官僚、政治家が日本をどういう方向に持っていきたいのかが正直見えていないというか提示されていません。TPPに参加することで日本にとって何がメリットなのか、納得のいくレベルでは説明されていない。

 メリットとして、例えば日本企業が海外に投資しやすくなるとか、知的財産であるコンテンツ産業の漫画やアニメなどを売り込むとか言われています。あるいはブランド品のコピー商品の規制ができるとか。しかし、世界最大のコピー商品製造国家である中国はTPPに入っていないので、それほどの経済効果は期待できません。

米国企業に狙われる日本市場。動きはすでに始まっている

 確かに私たちの生活の身近なところに安いものがバンバン入ってくるかもしれません。着るものでも食べるものでも。それは一見いいことのようですが、果たして本当にそうなのかと。