MRIC by 医療ガバナンス学会 発行
私たちの体型は、加齢とともに自然に変化しますよね。避けることができない変化もありますが、ライフスタイルで、進行を遅くすることができるものもあります。さて、今回のトピックは「カルシウム」です。カルシウムは、老化に深く関わっています。
私たちの体は、筋肉、臓器、脂肪、水分や骨などからできています。一般に、30歳頃をピークに筋の萎縮が始まり、筋肉量は減ります。骨はカルシウムなどのミネラルを失い、骨密度が減り、骨減少症や骨粗鬆症が起こります。
そして、これらの組織を失うことで、体の水分も減ります。一方、30歳以降は、体脂肪が着実に増えていきます。体脂肪は、体の中心に向かって増えていき、内臓の周りを埋めていきます。皮下の脂肪層は薄くなります。
ところで、男性も女性も、人種を問わず誰もが、加齢とともに身長が低くなります。身長が低くなる原因は、骨、筋肉そして関節の加齢が原因となっています。典型的には、40歳以降に、10年ごとに約1cmの身長を失います。
特に70歳以降は、さらに急速に身長が低くなると言われています。体重の変化は、男女の差があります。多くの男性は55歳くらいまで体重が増えますが、その後は減ります。
これは、男性ホルモンのテストステロンの低下が関係しているとも言われています。女性は65歳くらいまで体重が増え、その後は減り始めます。体重減少の原因は、筋肉が減り、その代わりに脂肪が増えることにあります。
さて、南カリフォルニア大学、北京大学とハーバード大学の研究者らは、1万7708人の中国人を対象に、45歳以降の、加齢に伴う身長の変化と健康との関係について*1大規模追跡調査を行いました。世界で最も人口が多い中国は、日本と同様に、高齢化社会が深刻な問題です。
結果は、60歳以上の参加者において、男性で平均3.3cm、女性で平均3.8cmの加齢に伴う身長の低下を認めました。ただし、身長の低下率には、社会経済的要因が大きく影響しました。
都市居住者では、農村部居住者に比べて身長の低下が少なく、また、小学校を修了した人は、そうでない人に比べて、男性では約0.9cm、女性では約0.6cm、身長の低下が少なめでした。
高校を修了した男性は、そうでない男性に比べて、約1cm身長の低下が少なかったのです。さらに、身長の低下が、記憶や思考力などの認知機能の低下に関係することが判明しました。
共著者のJohn Strauss教授は、私たちの加齢には、人生における初期のさまざまな出来事だけではなく、大人になってからのライフスタイルが影響するとコメントしています。