2006年以降、タイでは政治的混乱が続いている。タクシン元首相派と反タクシン勢力の対立は当面収斂しそうにないが、そのタクシン元首相がチェンマイ周辺で有力な「客家」系華人一族出身であることはあまり知られていない。
そこで今回は、前回のシンガポールに引き続き、タイの華人社会を取り上げることにしたい。(文中敬称略)
世界第2位の華人社会
台湾の「中華民国僑務委員会」統計によれば、2005年現在、タイの華人人口は705万人であり、海外の華人社会としては757万人の華人を擁するインドネシアに次いで世界第2位の規模を誇る。ちなみに第3位はマレーシア(619万人)である。
タイの華人社会は他の東南アジア諸国と同様、福建省、広東省、海南省出身者が圧倒的に多いが、イスラム国家であるマレーシア、インドネシアとは異なり、タイでは中国系と現地社会との混血・同化が広く進んでいると言われる。
現在タイの総人口は6300万人弱だが、今や中国系と混血していない純粋のタイ人を探す方が難しいとすら言われている。タイの華人705万人(総人口の11%)という数字は、あくまで「自らを中国系と考えるタイ人」の合計と考えた方がよさそうだ。
タイ社会に同化した中国系移民
タイの中国系社会を出身地・方言別で見ると、彼らの過半数(56%)は広東系の潮州方言を使い、客家語は16%、海南方言が11%、潮州以外の広東方言と福建方言がそれぞれ7%ずつという統計がある。