この2~3年でインドの経済は著しく発展を遂げ、GDP(国内総生産)成長率は約9%に達するまでになった。2008年度は、金融危機の影響と11月に発生したムンバイ同時多発テロがブレーキとなり、GDP成長率は7%台にまで低下すると見られる。

 しかし、インドは11億の人口を抱える国である。2025年になっても20代の若い労働力を十分に供給できると言われており、今後もインドの成長は高い水準で続いていくはずだ。

 今回は、古くからの歴史に支えられてきたインド人の考え方と、ものづくりに対する取り組みを見てみよう。特に、インドの顧客の特性を明らかにし、それに呼応して日本メーカーがどのようなものづくりを行えばいいのかについて考えてみたい。

 なお、ここで言う「ものづくり」とは、単なる「巧の技」といった狭義の意味ではない。東京大学大学院「ものづくり経営研究センター」のセンター長、藤本隆宏教授が唱えるように、設計情報を創造し、媒体に転写し、その結果である有形、無形の商品が顧客を満足させることを指す。開発、製造、購買、販売、サービス、まで含む、広義の意味で捉えていることをお断りしておく。

洗濯機は大量のサリーを洗えることが条件

 筆者はインドを訪れる際に、よく一般家庭に招かれることがある。中流家庭では(「中流家庭」といっても年収20万ルピー以上の層で、全人口の10%くらいに過ぎない)、日本並みに一式の家電製品は揃っている。しかしテレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機など、どれを見ても、日本メーカーのものはほとんどない。

 話を聞くと、日本メーカーの製品は品質が良く機能が充実していることは分かるが、値段が高いし、複雑な機能はインドでは馴染まないという。

 例えば日本メーカーが大型液晶テレビを売る時に、微妙な色彩を表現できると宣伝しても、何の関心も持たれない。それよりも18の公用語を持ち、派生を含めると844の言語を持ち、北部と南部の人が会話する時は通訳が必要とされる国では、国内でのバイリンガル機能が必要なのである。

 大家族制中心のインド人の生活を考えると、洗濯機は民族衣装のサリー(1.2×5メートルの布)を大量に洗えることが求められる。また冷蔵庫はベジタリアンが多いことから野菜がたっぷり入ることが重要なのである。

 冷暖房エアコンは一流ホテルに泊まってもまず付いていない。インドの冬は寒くなるが、エアコンの温度を上げても冷たい風が吹き出すだけである。クーラー機能さえあればよく、冷暖房兼用やきめ細かい温度調整機能は不要なのである。すなわち、基本的な機能さえ満足できればコストの安い方を選ぶのがインド流である。

売れている車の約80%は経済的な小型車

 自動車を選ぶ際のポイントは、家族にとって安全な交通手段であり、利便性があるか、そして燃費効率がいいか、といった点である。当然、価格も大きなポイントとなる。インドでは初期投資の高いディーゼルエンジン車が比較的よく売れている。重視するのは、購入価格よりもむしろTCO(総保有コスト:Total Cost of Ownership)だ。購入から廃車になるまでの税金、燃料費、維持費、中古車価格まで計算したコストを考えているから、ディーゼル車が売れるのだ。