体のためには強烈なにおいのニンニクを

孤高の食材「ニンニク」の真相(後篇)

2013.03.22(Fri)漆原 次郎

 ニンニクの細胞には、無臭のアリインという物質がある。また別の細胞にはアリイナーゼという酵素がある。例えば、動物が生のニンニクをかじると、ニンニクの細胞が傷ついてアリインとアリイナーゼが触れ合うことになる。すると、この2つの物質が反応して、別の「アリシン」というにおい成分が作られる。このような反応によって生み出されたにおい成分が、動物にイヤな思いをさせるわけだ。

 関氏によると、ニンニクから放たれるにおい成分には、硫黄元素(S)を多く含んでいる。アリシンには他に、ニンニクの細胞が傷ついたとき感染を抑える抗菌作用もある。

 人間の中にも、あのにおいを避けようとする者はいる。ニンニクのにおい戦略は成功と言える。反面、あのにおいが好きという者もいる。これは、ニンニクにとって“誤算”だったのかもしれない。もっとも、人に栽培してもらえるという、生存や種保存にはプラスとなる“誤算”もあっただろうが。

ビタミンB1と結びついて力をもたらす

 「ニンニク」と聞いて思いつくのは、においの他に「精力がつく」「元気が出る」といった強壮効果だ。経験的には、ニンニク料理を食べたあと、力がみなぎるような気もするが、どのような理由でそう言われるのだろう。

 「ニンニクのにおい成分が、ビタミンB1の吸収を助けることがよく知られています」と、関氏は話す。

 ビタミンB1は、体に摂り込まれた糖の代謝を促し、エネルギーを生み出す過程を支える栄養素だ。ただし、ビタミンB1は水溶性で、体に効率よく摂り入れるものではない。「ところが、ビタミンB1とアリシンが結合すると、脂溶性のアリチアミンという化合物になり、これで体への吸収率が高まるのです」

 アリチアミンになれば、効率よく体内に取り込むことができる。ニンニクのにおい成分のアリシンが、水溶性のビタミンB1を脂溶性のアリチアミンに変えることで、よりエネルギーを生み出す効果を高めるのだ。

 ニンニクの成分には、「ここ一番」というとき力を出すための効果もあるという。

 「交感神経の刺激を介して、アドレナリンやノルアドレナリンといったホルモンの分泌を促進します。ニンニク摂取後の元気感はこの作用によるところが大きい」

 アドレナリンもノルアドレナリンも、一時的に心臓がどきどきしたり、血圧が上昇したりするのを促す、いわば“やる気モード”を引き起こすホルモンだ。ニンニクのにおい成分のアリシンが分解して作られるジアリルジスルフィドなどの物質が、これらのホルモンの分泌を促すという。

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