通貨変動のたびに必ず引き合いに出されるのが「牛丼戦争」。最近の円安傾向と米国産牛肉の輸入規制緩和で性懲りもなく「価格競争に突入か」と新聞では騒がれ始めた。私たちもその価格の安さにはついつい興味を引かれ記事を読んでしまう。
しかし、低価格を実現するための経営については関心を向けることが少ない。なかでも店舗を建てる際にどれだけ緻密な投資収益率を計算を繰り返しているかは、新開発のメニューや価格の派手さの前にほとんど目を向けられることがないように見える。
デフレ経済が促した土地の有効活用
農耕民族である日本人は土地の所有にはこだわるものの、その土地がどれだけの利回りを生むかについては案外無頓着だった。高度成長期には土地は持っていれば値上がりしたので、どんぶり勘定で土地買収に走り、それがバブル経済の1つの要因となった。
そしてバブル崩壊後は世界的にも例を見ない長期間のデフレ経済に苦しむことになる。一転して持っている土地は値下がりする一方になった。
しかし、その長いデフレ経済が土地所有願望の強い日本人に、ある“知恵”を授けることになった。土地に対する投資収益率の緻密な計算である。
牛丼戦争やハンバーガーチェーンの競争はいまやここが経営の主戦場とも言える。価格の安い商品で利益を出すために収益率の悪くなった店舗は躊躇なく閉店の憂き目を見る。店舗展開の巧拙が企業の競争力に直結するからだ。
日本企業を蝕んできたデフレ経済が一方では、緻密な企業経営という副産物を生んだとも言える。
実は、こうした経営には先駆者がいる。大手住宅メーカーの大和ハウス工業である。いまから35年前、創業経営者の強い意志で遊休不動産の活用ビジネスを始め、いまでは同社の大黒柱の1つとなっている。
地主の資産管理アドバイザーとして遊休不動産の活用方法を提案し、ロードサイドの物販や外食などの顧客企業に貸し出す。時代の要請に合った顧客を見つけて地主とマッチングさせることで、管理コストばかりかかっていた遊休地が、カネの成る木に化ける。
一方、新しいビジネスを始めて一挙に多店舗展開を図りたい新進気鋭の企業にとっては、またとない急成長のチャンスを手にすることができる。