ロシアは最近、積極的に北洋航路開拓を目指しています。
直近の報道に拠れば、露ガスプロムが傭船したLNGタンカー、オビ・リバー号は11月7日に約13万5000立方メートルのLNGを積み込み、ノルウェー北部のハンメルフェストLNG出荷基地を出港しました。
北洋航路の開拓
露ロスアトムフロート所属の2隻の原子力砕氷船に先導され、北極海航路(北洋航路)を通過。ベーリング海峡から南下して、12月5日に北九州市戸畑区のLNG受け入れ基地に到着しました。
約30日間の航路でしたが、ガスプロムの発表によれば、北洋航路でLNG輸送に成功した初めての事例となります。
経済的にメリットのある航路であるかどうかは、砕氷船の運航費用との見合いの問題になるでしょうが、航海日数が大幅に短縮されることだけは間違いありません。
では、ロシアは経済的メリットのみを求めて北洋航路開拓に邁進しているのでしょうか?
筆者はそうではないと考えます。最初にお断りしておきますが、筆者は軍事分野では全くの素人です。素人の軍事考察ですから、専門家から見れば素人が何を言うかと思われるかもしれませんが、そこはご容赦願いたいと思います。
バルチック艦隊遠征記
日本人に馴染みの深い名前のバルチック艦隊は1904年9月10日、サンクトペテルブルク沖合のクローンシュタット軍港からレーベリ(現在エストニアの首都ターリン)に回航され、同港に全艦隊が集結しました。
露ロマノフ王朝第14代皇帝ニコライ2世は同港にて10月9日、壮途に就くバルチック艦隊の観艦式を挙行。同艦隊はその後リバウ軍港(現在ラトビアの港湾都市リエパヤ)にて兵站補給。軍需品を満載して10月15日、リバウを出港しました。
バルチック艦隊が目指すウラジオストク(浦塩)までは、喜望峰経由ではるか1万8000海里(1海里=1852メートル)、7カ月間にわたる大遠征となります。
主力の第2艦隊は、遅れて出発しスエズ運河を通過する第3艦隊と合流すべく、途中マダガスカルにて約2カ月間待機。結果として、これが致命的なミスになりました。