韓国の大統領選挙まで2カ月を切った。有力3候補のうち誰が当選するのかまったく見通しが立たない。3候補そろって大企業に厳しい政策を発表し、経済人は選挙戦とは距離を置く姿勢を決め込んでいるが、1人の女性CEO(最高経営責任者)だけはその例外だ。とにかくやたら目立つこの経営者は、韓国のファッションリーダーでもある。
与党セヌリ党の大統領候補である朴槿恵(パク・クネ)氏の会見。隣に長身で顔が小さく、派手なファッションの女性が寄り添うことが多い。
朴槿恵候補に寄り添う宝塚スターのような女性
身長176センチ。黒のタイトジーンズに真っ赤な靴。宝塚スターのような女性が硬い表情の朴槿恵候補の隣で笑顔を振りまく。
この人物こそが、現役のCEOのままセヌリ党の大統領選挙対策共同委員長に就任した金聖株(キム・ソンジュ)氏(55)だ。
金聖株氏は、自分の名前を付けた聖株グループの会長。といっても韓国でも知る人は少ないが、カバンなどのブランドで有名な「MCM」のオーナーだ。
MCMはもともとドイツのブランドで、日本でも20年くらい前までは若い女性を中心に人気があった。だが、いつの間にか目につかないようになり、人気ブランドのリストからはひっそりと消えていた。
ところが、最近になって再び人気を取り戻しつつある。2012年夏には16年ぶりに英国の百貨店「ハロッズ」での取り扱いが始まったほか、世界市場での売り上げも好調に回復している。
ドイツブランドのMCMを買収して急成長
実は、MCMは韓国企業になっている。金聖株氏が率いる聖株グループは1990年代初めから韓国内でのMCMブランドの販売権を持っていた。世界市場でのMCMの販売が不振になってドイツ本社の業績が悪化すると、2005年に聖株グループが買収して「韓国ブランド」になったのだ。
MCMは韓国では一貫して高級ブランドとしての地位を保っていた。聖株グループが買収して以降は、韓流スターたちがMCMのバッグなどを愛用する写真などがメディアに出たことでさらに人気を高めた。