8月25日の夜は久しぶりで都内のあるホテルに出向いた。在京中国大使館が毎年主催するレセプションに招待されていたからだ。ところが今回はどうも様子が違う。地下鉄を降りてからホテルに着くまで、やたらと警察の警備関係者の姿が目についたからだろうか。

 当日は珍しくレセプション開始30分前に到着した。既に多くの招待客が集まっていたが、やはり会場の雰囲気が少し変だ。いつもなら壇上に大きく掲げられる「赤地に白字」のイベント名称もない。確か今日は「日中国交正常化40周年」記念レセプションのはずだったが・・・。

幻の40周年記念行事

野田首相、「中国への妥協はあり得ない」 尖閣領有権

9月26日、ニューヨークの国連本部で「尖閣問題で妥協はしない」と演説した野田佳彦首相〔AFPBB News

 冒頭のアナウンスでその理由が分かった。今回のレセプションは「中華人民共和国建国63周年」記念だという。

 なるほど、それで今回は多くのマスコミが取材に来ているのか。よく見ると、会場のあちこちで報道関係者が程永華大使の挨拶を一言一句書き取っていた。

 同大使曰く、「日本政府の島の購入行動によって(日中関係が)厳しい局面にあることを深く憂慮している」「古い世代の指導者が合意した重要な了解事項と共通認識も忘れるべきではない」。報道にある通り、この種の大使挨拶としては極めて異例である。

 9月27日に北京で予定されていた中国政府主催レセプションは中止となった。日本においては、一応中国大使館主催でレセプションは開催されたが、「正常化40周年記念」の部分は中止ということなのだろう。とても残念なことだ。

 思い返せば、10年前の「正常化30周年」の際、筆者は北京に在勤していた。当時も小泉純一郎首相の靖国神社参拝を巡り、日中関係はかなり緊張していた。だが、今年のような刺々しい雰囲気ではない。今と比べれば、それなりに「古き良き時代」だったのか。

10年前と変わらない出席者

 今回レセプション会場で最も強く感じたことは、大半の日本側招待客が10年前とほぼ同じに感じられたことだ。それ以前のことは直接経験していないので不明だが、恐らくあまり大きく変わっていないだろう。もちろん、それはそれで御同慶の至りである。

 具体名には触れないが、会場には元首相、元国会議長、元官房長官など、いずれも一世を風靡した政界の日中友好人士たちがあちこちで談笑していた。1972年の国交正常化前から日中交流に尽力してきた多くの関係者たちも矍鑠としていた。皆様、お元気で何よりである。