9月10日、日本政府が魚釣島の国有化を決定すると、中国ではそれまでにない激しい怒りの声が噴出した。

 11日、多くの新聞は「主権は絶対譲らない」と見出しを掲げ、12日の「東方早報」は新聞紙面24ページを魚釣島の記事で埋めた。こうしたことは過去に例がない。

 中国流の「先手必勝」のやり方で向かってくる日本政府に対して静観を続けてきた中国政府だが、今回は「ブチ切れた」といった感じだ。

 それまでも、中国政府の弱腰を罵り、街頭でデモ行進を行い、はたまた丹羽宇一郎駐中国大使の乗った車から日本国旗を引き抜くなど、一般民衆の抗議活動はエスカレートしていた。そこにさらに火に油を注いだのが、この「国有化決定」だった。

 地下鉄の車両内のディスプレイには「日本は火遊びで自分を火傷させる」というテロップのニュースが繰り返し流れ、新聞もテレビも、ミサイルが飛び交うイメージ映像を多用し、あたかも戦火を交える寸前かのような空気を醸し出している。

「魚釣島は中国のものだ」のポスター。市内大学のキャンパス掲示板の上からベタベタと貼られていた

 12日からは魚釣島の天気予報が始まった。中国はフィリピンとの間で黄岩島(スカボロ-礁)事件を繰り広げたときも黄岩島の天気予報を始めたが、今回もそれと同じやり方だ。

 これまで中国には「日本と一戦交えるべし」と唱える過激派も存在したが、大手メディアは「そんなことはあり得ない」と否定してきた。だが、9月10日を境に「残された選択はこれしかない」というような報道も見られるようになった。

一般市民は「本当はどちらの領土?」

 柳条湖事件が勃発したとされる18日を前に、上海でも反日ムードが一気に高まっている。

 16日は、「魚釣島は中国のものだ」「日本製をボイコットせよ」と叫ぶデモ隊が上海日本国総領事館目指して参集した。早朝から日本領事館周辺はコンテナでバリケードが貼られ、警備隊員が何重にも人垣を作るが、デモ隊は難なくすり抜けて日本領事館を目指して行進する。