不純物なし「全透明氷」のつくり方

日本が“氷先進国”に駆け上がるまで(後篇)

2012.08.03(Fri)漆原 次郎

 そこで今関氏は、エアレーション装置を使う目的に立ち返った。エアレーションを行う目的は水を撹拌させるということだ。エアレーションでなくても、アイス缶の中で水が撹拌しさえすれば、アイス缶の壁側に白い部分がつくられることはない。「そこで、水の撹拌に、エアレーション装置でなく、水流器を使うことにしたのです」

2010年に開発した無気泡製氷機。水槽手前の黒い装置が流水器

 水流器は、アイス缶の中の水の循環を促す装置だ。「深いところに沈めると氷になったとき取り出せなくなるので、缶の上部に置いて凍ってきたら停めるようにしたのです」

 エアレーション装置を水流器に替えたと書けば、簡単に思いつくことと思われるかもしれない。「でも、水流の圧力で、成長するはずの氷が削られてしまっては、いつまで経っても氷はできません。失敗を重ねながらやっていくしかありませんでした」

 こうして、氷中花をつくることのできる無気泡製氷機を1990年代後半に開発した。その後、約8年をかけて製氷の時間短縮を目指し、2010年には標準的な48時間で氷をつくれる無気泡製氷機を完成させた。

食への要求が製氷技術を高めた

 現在の氷市場では、紹介した角氷製氷とともに、コンビニエンスストアなどで売られる「袋詰めカチワリ氷」用のプレート製氷も主流となり需要が高まってきている。

 「世界の氷を見てきましたが、外国の方々が日本と同じ氷をつくるといってもそうはいかない。そう言ってよいほど、日本の氷の技術は高まりました」。今関氏はそう断言する。

従来の製氷機でつくった氷(左)と無気泡製氷機でつくった氷(右)

 そうだとすれば、日本の製氷技術を高めたものは何だろうか。

 「日本の食文化が日本の氷の質を高めたという一言に尽きます。一品ずつを目で見て味わう懐石料理に氷は使われますし、口あたりの柔らかさが大切なかき氷にももちろん氷は使われる。繊細な五感を持つ日本人の、食への高い要求に、日本の製氷家たちが応えてきた結果としていまがあるのだと思います。自分たちでは気付かずに、それをやってきたのです」

 無色透明な存在ながら、料理の彩りを豊かなものにし、またそれ自体が味わわれる。日本の食文化に、氷の存在は欠かせないのだ。

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