不純物なし「全透明氷」のつくり方

日本が“氷先進国”に駆け上がるまで(後篇)

2012.08.03(Fri)漆原 次郎

 「エアレーション装置を使うのは、原料水の中の不純物がアイス缶の壁に付いて氷が白くなるのを防ぐためです」

 氷の結晶構造は不純物などの微粒子を入れさせない。つまり、水から氷ができていくとき、氷が不純物をまだ水である部分へと押しやるのだ。氷は壁側から中心に向かってつくられていくから、不純物が最後に中心部分に集められる方が都合がよい。「中心に集められた不純物を捨てます。また、エアレーション装置も抜き取ります」

質の高い氷へ、製氷業界の意識変革

 実は、こうした角氷をつくる製氷システムは、手動式のものでは戦前にその全容が確立されていたという。明治から続く135キログラムという氷の質量の規格といい、製氷業界は確立したものが長らく続く業界なのだろうか。

 「職人と工場長が昔から働いていて、工夫をしなくても同じ生産工程を繰り返せば氷をつくれるし売れる。考えなくてもよかったのです。実は、かつては衛生面も不完全で、土の付いた靴のまま作業場に入るのが当たり前でした」

 古くから続いてきた氷づくりの変わらない部分がありながらも、衛生的でより質の高い氷づくりは目指さなければならない。こうした意識から、より衛生的で、より質の高い氷が目指されていくことになった。いまから30年程前のことだという。

 今関氏自身も、冷凍や製氷の研究を本格化させていったという。質の高い氷づくりを目指すという意思と、電機メーカーによる小型自動製氷機の台頭で経営に危機感を持ったという事情からだ。

 そしてその研究成果は、新たな製氷機の開発に結びついていった。一例として今関氏が紹介するのが、「無気泡製氷機」だ。

48時間で透明な角氷をつくる

 「一般的な角氷のつくり方」として紹介した方法だと、工程の最後でどうしても氷の完成度を下げる要素が残ってしまう。「最終的にエアレーション装置を抜き取りますが、そこにまだ水の部分があり、これが凍るとほんの薄くですが、氷に白い部分ができてしまうのです」

 アイス缶の壁側に白い部分をつくらないためにエアレーションは欠かせない。だが、エアレーション装置の存在があだになり、最後に白い部分ができてしまう。「氷屋であれば、誰もが中心の白い部分をなくしたいと思うものです」

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