2012年12月の大統領選挙を控え、韓国では「懸案は次の政権に先送り」という例が目立ってきた。政府高官も政治情勢に敏感にならざるを得ない時期だが、ひときわ仕事ぶりが目立つ政府機関がある。公正取引委員会だ。

 韓国で夜のニュースを見ていると、ほぼ毎週のように出てくる項目がある。「公取委が○○を摘発した」という内容だ。

CD金利の談合調査で金融界は大騒ぎ

 2012年7月末、韓国の金融界は大騒ぎになった。公取委が、住宅ローンなどの基準となるCD(譲渡性預金証書)の金利を巡って金融機関の間で談合があったとの疑いで本格的な調査に着手したことが明らかになったからだ。

 銀行が短期資金を調達するために発行するCDの金利は、個人や銀行が銀行から融資を受ける際の金利の基準となるとされている。国債3年物金利など市中金利は2012年4月以降じりじり下がっているが、CD金利はまったく変動がないことなどから、公取委は銀行やCD売買を仲介する大手証券会社間で談合があったのではないかとの疑いを強めている。

 国際金融界では、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)が不正操作された問題が明らかになったばかりで、韓国の金融界でも「国際的な信用問題にかかわる」との懸念の声が上がっている。

 談合が事実なら、銀行などは事実上金利を操作して巨額の不正利益を上げていたことになる。銀行経営の信頼性に重大な問題が生じる上、金融当局の管理責任問題に発展することは必至だ。韓国の金融委員長は2012年7月20日に国会の答弁で「談合があったとは考えていない」と述べ、打ち消しに必死だ。

 金融当局は、公取委の調査を不快に思っているようだ。

公取委から相談も受けず、メンツ丸つぶれの金融当局

 CD金利については、2011年に公取委が共同調査に乗り出そうとしたが、この時は「不発」に終わった。それが今回は、公取委から事前の相談もなく、突然、メディアに大きく報じられ、金融当局のメンツは丸つぶれだ。

 公取委はそんなことは気にしない。「国民の関心が高い問題で、早急に調査をして発表したい」という立場で、その行方に金融界の大きな関心が集まっている。