ところが、今は消費者が反応するかどうかは、ソーシャルメディアで施策を展開してみるとか、ネット広告を打って、どんなユーザーが反応したかを知るなど、実際に消費者の行動を見てから、本格的な(お金のかかる)マス展開のメディアやコミュニケーションコンテンツを決めるというプロセスが考えられる。
事実、ソーシャルメディアキャンペーンとしての展開で終わるはずだったものが、ユーザーの反応があまりにいいので、予定していなかったCMを急遽作ってテレビも使った事例もある。
ということは、従来のプロダクトマネジャー制で、各ブランドが事前の予算とプランをきっちり守っていくモデルでは、柔軟性がないことになる。予算化はするものの、その内容は施策を進めるなかでやりながら決めていく方がよいと思われる。
参考:『戦略は直観に従う』(ウィリアム・ダガン著)
問題は最初にすべて決めないで進めるやり方に、企業の社内が対応、許容できるかだろう。場合によっては、ブランド横断的に予備予算を持って、柔軟に追加予算を投入できる仕組みを持つ方が対応しやすいかもしれない。
いずれにしても、広告を打ちながら消費者の反応がすぐに分かる時代になったことを利用しない手はないのだ。
「PDCAを高速で回す」といった従来ウェブサイトで行われていたことが、マスを含むキャンペーンほかのマーケティング施策すべてに言えるようになった。
というか、ネットで観測できる様々なデータが、消費者反応を確認しながら、「訴求対象を再設定する」とか、「最も反応するクリエイティブに定める」ということを自然に受け入れる方が施策は成功する可能性が高いと思われる。
従来、「ターゲットを絞る」⇒「ターゲットニーズを掴む」⇒「ターゲットにとっての価値を提供する」という商品開発やコミュニケーション開発プロセスは、マーケティングプロセスとして必ず行われてきたことだった。しかしターゲットは、想定して最後まで走るのではなく、消費者反応を確認することで、実証して走るものになるだろう。
私が最近提唱しているキーワードは、「反応する人がターゲット」という考え方であり、「『想定するターゲティング』から『実証するターゲティング』」という考え方である。
ターゲットを想定し、コミュニケーション開発のプロ(広告代理店)にアイデアを出させ、例えばTVCMを作ったとする。広告主と代理店という送り手のなかでは「これがいい」ということになるのだが、送り手主導の時代にはそれでよかったものの、もう受け手主導のマーケティングになって久しい。
受け手、つまり消費者が主導権を持つ時代には、消費者反応をいかに捕捉し、それを「打ち手」に反映させるか、またそういった最適化の発想が、企業の隅々にプログラムされているかが大事なことになっている。
最適化の概念では、途中で軌道修正が利かないといけない。それがTVCMのメッセージ内容とかクリエイティブとかでもそうだ。むしろそこが重要で、重要なところこそ軌道修正できる体制で臨むことに意味がある。
