「スマート」の時代だ──と言っても、体型の話ではない。
最近、巷には「スマート×××」という呼び名が溢れている。その中でも、今後の日本の産業発展にとって重要となるのは、「スマートシティ」「スマートコミュニティ」と呼ばれるプロジェクトだ。
「スマートグリッドで第2のネットを構築せよ」(2009年7月24日公開)で紹介した電力を効率的に利用する「スマートグリッド」に対し、さらに一歩踏み込み、熱や未利用エネルギーも含めたエネルギーの面的利用に取り組むプロジェクトと言える。
その背景には、化石燃料からのエネルギー転換という大きな課題があり、情報通信技術がその課題の解決の一端を担っている。
「スマートグリッド」の技術をベースに、再生可能エネルギーを用いた分散型発電システムや電気自動車の充電システム整備に基づく交通インフラ、省エネルギーで高効率な空調装置などを用いたビルや住宅(スマートハウス)などの都市システムを総合的に結びつけた高度で自立化された次世代都市、効率的で持続可能な都市づくりの構想である。
100兆円規模とも言われる巨大市場に、日本は食い込んでいけるのだろうか。
世界各国のスマートシティ・スマートコミュニティ
世界各地で、既にスマートシティの取り組みがスタートしている。
例えば米国。コロラド州のボルダー市では、風力や太陽光などの再生可能エネルギーによる発電をはじめ、スマートハウスによる分散エネルギーや電力のリアルタイム料金制度を導入するなどして、古くなった電力網をスマートな電力網に転換中だ。
オランダ・アムステルダム市では、生活スタイルをどのように変えれば持続可能な家庭生活・企業活動・交通手段・公共スペースを実現できるか、市民参加型の実証実験を展開している。エネルギーの使用状況をモニタリングするスマートメーターを住宅やオフィスビルに導入し、またショッピング街の街灯や店舗の省エネも促進している。
ポルトガルのプラニットバレー(PlanIT Valley)は、ポルト市郊外に政府から譲り受けた16平方キロの土地を開発して、スマートで低炭素な街をつくる取り組みだ。再利用可能なエネルギーとごみ処理発電インフラの活用を進めている。