今から10年後の2020年、我々の生活はどう変化しているのだろうか。

 恐らくこんな風になっているのではないか――。地球温暖化の進行で予測困難な台風やハリケーンが猛威を振るい、平均気温は一段と上昇。マラリアなど熱帯・亜熱帯地域特有の感染症が蔓延し、世界的に食料不足が発生。もはや異常気象は毎年恒例となり、一体何が異常なのか分からない・・・

 こうした地球規模のリスク拡大に加え、日本国内に目を向ければ少子高齢化が従来の社会システムを壊し始め、生活不安が拡大。医療機関は高齢者で溢れ、公的保険は限界に達して窓口で支払う自己負担額は年々増大・・・

街角の話題、主人公は子どもからペットに?

 一方、街角で聞こえてくる主婦の立ち話の主人公は、「子ども」から「ペット」に交代している。時間を持て余した退職高齢者同士の諍いが増え、裁判員制度の定着と相まって些細な争いが簡単に訴訟に発展。工場はもとより商業施設や介護施設、タクシーに至るまで労働力を下支えしているのは外国人・・・

 不安大国ニッポン――。もうそこまで迫って来ている。もちろん歓迎できる事態ではないが、不安が大きくなれば大きくなるほど保険の果たす役割は増し、保険業界にとっては絶好のビジネスチャンスになり得る。果たして、ピンチをチャンスに変えて持続的成長につなげられるのか。保険市場の未来を占ってみた。

ペットの数が子どもを超えた国、変質した家族の「カタチ」

 「我が家に新しい家族が増えました」――。子どもか、孫の話かと思ったら、よくよく聞いたら犬のこと。そして愛犬の自慢話で盛り上がる。こんな経験のある人は少なくないだろう。

 ペットフード協会の調査によると、2009年の犬・猫飼育頭数は2234万頭。実は今や、子どもの人口よりペットとして飼われている犬や猫の方が多いのだ。

 国内の少子化が進む中、2003年に犬猫飼育頭数は人間の子ども(15歳未満)の数を上回った。(筆者注=ペットフード協会の調査は2009年から外猫の数を含めなくなり、統計上は09年の犬猫飼育頭数が前年比で減少。だが実質的には03年以降、15歳未満の子ども人口を一貫して上回っている)

 ペットを飼育できるマンションがここ数年で飛躍的に増加しており、その「家族化」はますます加速していくだろう。そしてヒトばかりか、獣医療の高度化によりペットの世界でも高齢化が進んでいる。

 しかしながら、ペットには公的医療保険制度はなく、動物病院での治療費は全額飼い主の負担。その一部をカバーするために注目されているのが、「ペット保険」である。

 現在、日本でペット保険を取り扱っているのは、損害保険2社と少額短期保険7社。大手保険会社では、T&Dグループが少額短期保険で参入している。以前は無認可のペット共済が主流だったが、2007年4月の保険業法改正でペット保険も国の認可が必要になった。調査会社の富士経済(東京)によると、法改正に伴う信頼性向上を背景に2010年末のペット保険加入件数は過去最高の54万1000件にも達すると予測されている。

 それでも、日本におけるペット保険の普及率は2%程度に過ぎない。スウェーデンが約50%、英国が約20%という水準を考えれば、成長余地の大きな有望なマーケットと見ることもできよう。