今やすっかり世の中に定着した感がある「KY」という言葉。
空気読みの達人は増える一方だが、ドリームインキュベータの堀紘一会長は、
その風潮が日本を衰退に向かわせると警鐘を鳴らす。
空気を読み、迎合しているばかりでは世の中を変えられない。
あらゆる分野で、今、求められるリーダーの資質を堀氏に聞いた。 (聞き手は鶴岡 弘之)

──日本の現状に相当な危機感をお持ちのようですね。

一流の人は空気を読まない』堀 紘一著、角川oneテーマ21、705円(税別)

  日本の中にいるとあまり気づかないかもしれませんが、他の国に行ってみると、やる気に満ち溢れて頑張っている人たちや、向上心のかたまりのような人たちのエネルギーに圧倒されることがあります。

 ところが、日本ではなかなかそういう人にお目にかかれない。自分一人が頑張ってもどうなるものでもないと、半ばみんなあきらめちゃってる。閉塞感が漂ってますよね。

 さもなければ、やれ資格を取ろうとか、やれ副業で儲けようとか、手っ取り早く効率的に儲けようという話はあるんだけど、人間としてもっと向上したいとか、世の中をもっと良くしたいというような人が少ない。

 今の日本人は、希望とか、本来人間が持っているべきエネルギーがだいぶ薄れちゃってる気がしてならない。これはマズいんじゃないかなあ、という印象を受けてますね。

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──「KY」という言葉を最初に聞いてどう思いましたか。

  その言葉が流行り始めた時に意味が分からなくて、人に聞いたんです。そうしたら、空気を読めない人のことを馬鹿にする言葉なんですね。

 空気が読めないと言って馬鹿にするのは分からなくもない。でも僕が思ったのは、空気が読めてその場の空気に合わせられる人がそれほど立派なのか、ということです。

 そつなく器用に生きていくには、空気を読んでそれに反応していくのがいいのかもしれない。確かにそうやって出世した人が重役をしている会社は、世の中に沢山あります。けれどもその会社は成長しているのか、従業員は幸せになってるのか、お客さんは喜んでるのか、と聞いてみたい。

 よく考えてみると、空気を読めるのは自分が生きていくには都合いいかもしれないけど、何も世の中の役には立っていない。だから「KY」と言って馬鹿にするのはちょっと違うなぁ、と思ったわけです。

 じゃあ、今の日本でどういう人が求められているのかというと、なまじ空気なんか読んで、その場の雰囲気に合わせられるような人じゃない。空気なんておかまいなしに、「今、こういうことをすべきである」「誰もやろうとしないけど、自分は敢然とやる」というような人ですよね。