2011年12月26日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行(前回を読む

 今、日本は危機的状況にあります。急速に貧しく、高齢化しつつあります。平成21年度の国民健康保険被保険者3954万人の、1世帯当たり平均所得は158万円でしかありません。被保険者の所得は、14年間で3分の1減少しました。

日本の危機的状況とトクビルの自由主義

 平均保険料は14万8000円でした。収入からみると残酷と言ってよい額です。12%の世帯は保険料を払っていません。国民皆保険はすでに破綻しています。

 これまでの医療・介護サービスは維持できなくなりつつあります。厳しい状況の中で、それなりに満足して人生を全うしてもらうために、医療や介護をどうしていくのがよいか、解決策は見えていません。

 国家公務員は、自由な立場で、新しい試みを考え出して、それを実行することは許されていません。村田メールに言及されている庁内調整とは、端的に言えば前例のない活動を潰す作業ではないでしょうか。

 官僚には、未来に向かって、斬新な方法を考え出して、危機的状況を突破する能力は、原理的に期待できません。日本中で、活力を持った個人が、知恵を振り絞って、様々なことを試みなければなりません。めったにないであろう成功体験を、日本中で共有しなければなりません。

 活力のある個人の活動は、社会を大きく変えます。未来のスティーブ・ジョブズ(アップル)、ビル・ゲイツ(マイクロソフト)、ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリン(グーグル)が活動を開始した時に、彼らの活動を抑圧してはならないのです。

 村田メールは、突出した個人を抑圧することにおいて、横並びを強いることにおいて、極めて日本的です。

 南相馬市では、これから、被災者が暮らすためのまちづくりが始まります。まちづくりは、高齢化日本の閉塞状況を解決するための実証実験のようなものになります。

 解決の糸口を見つけだすとすれば、南相馬市のようなフィールドで、これまでにない活動にチャレンジする若者ではないでしょうか。村田メールは、南相馬市の未来の可能性を閉ざす方向に働きます。

 フランスの政治哲学者アレクシス・ド・トクビルは、『アメリカの民主政治』で、中央集権を政治的中央集権と行政的中央集権に分類し、前者は評価しましたが、後者については疑問を投げかけています。