12月4日に行われたロシア議会の下院選挙で、与党「統一ロシア」は大きく議席数を減らした。与党の獲得議席は、前回の2007年選挙と比べたら半分以下になってしまった。

 得票数を水増ししたとされる「不正選挙」に対して、12月10日に数万人が参加するデモが行われた。これは、プーチンがロシアを率いるようになってから一番大きい反体制デモであった。デモの目的は「革命」ではなく、プーチン政権を合法的な手段でやめさせることにあった。

 今回の選挙結果は、ロシアの今後の政局を見通す上でもっと注目に値すると思う。

 まず、今回の選挙の結果は2012年3月の大統領選挙にどのような影響を及ぼすだろうか。それについては、ロシアの政治専門家だけではなく一般のロシア人の大多数も、あまり大きな影響はないだろうと見ている。

 プーチンの返り咲きは決して円満に進むとは言えないが、プーチンの代わりを務められる適当な政治家がいない。今回の下院選で議席数を伸ばした政党のリーダーの中に、プーチンと互角にわたり合えるような政治家は1人も見当たらない。

「出来レース」の政権交代に国民は辟易

 しかし、大統領の座に復帰するプーチンのそれからの6年間は、彼にとって大変な試練になることだろう。

 今回の選挙結果で明らかになったように、プーチンの人気は下落している。プーチンから、ロシアの「救世主」というイメージは失われた。さらに、選挙で不正を働いた「詐欺師と泥棒の政党」に対する抗議と反感は、プーチンとメドベージェフの両氏に向けられている。

 今までプーチンは、国内の政治が安定し、国民の生活環境が向上したことを訴えて、人気を維持してきた。だが、今となっては「安定ではなく停滞だった」と受け止められている。

 ロシアが輸出する石油と天然ガスの価格が上昇したおかげで、確かに国民の生活環境は次第に良くなってきた。しかし一方で、汚職、貧富の格差、社会不平等などの問題が表面化してきた。また、経済改革は遅々として進まず、中小企業の経営は相変わらず苦しい。

 プーチンとメドベージェフが交互にトップに立つ「出来レース」の政権交代に、ロシア国民は辟易としている。11月21日に、プーチンはモスクワの格闘技スタジアムで、観客からそれまでにないブーイングを浴びせられたのは、その表れだろう。

議会のコントロールは今まで通りにできるのか

 今回の選挙結果は、2000年から続いているプーチン型の政治システム(強権的な政治家が君臨する民主主義)を変えるきっかけになるだろうか。

 ロシアの政治評論家は慎重な見方をしながらも、「なるはずだ」と口を揃える。