東アジアサミット、アジア地域機構の構築で議論

2009年10月、ASEAN10カ国に日中韓印などを加えた16カ国による東アジアサミットがタイで開催された。こうした関係が強化される中で、台湾が埋没してしまうこ

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 台湾はこれまで、日米欧やASEAN諸国など主要国とのFTAも模索してきた。これに対し、中国は「1つの中国」原則を楯に、台湾のFTA締結に一貫して反対している。台湾の独立が既成事実化することを阻止したいためだ。

 馬総統は、東アジア内で73の経済協定が締結されている事実を挙げ、「FTAの実績がないのは北朝鮮と台湾だけだ」と強調。台湾の国際社会における孤立状態とそれによって引き起こされる台湾経済の衰退可能性を指摘し、ECFA締結の必要性を住民に訴える。

 馬政権は台湾が国際社会に参与するためのカギは中国が握っているという事実を認めた上で、まずは中国とECFAを締結し、その後に主要国との経済協定につなげるとする戦略を打ち出している。

海外企業の台湾撤退に歯止め、東アジアの貿易ハブ化目指す

 馬政権は中国とECFAを早期に締結することで、優先的な対中市場アクセス権を獲得し、台湾を東アジア地域における貿易ハブに昇格させるという中長期的な戦略を抱く。

 日本を含む海外企業が、経済統合の流れから取り残され相対的なコスト高に陥りつつある台湾から撤退する動きを強めているためだ。馬政権はECFAに対し、海外企業による対台湾投資を復活させる役割を期待している。

 ここでよく引き合いに出されるのが日台企業のアライアンスだ。日本企業にとって中国への直接投資には様々なリスクがあるため、対中投資経験の豊富な台湾企業との提携を通じて中国に進出し、リスクを低減するという取り組みだ。台湾当局はECFA実現によって日台アライアンスのインセンティブが上昇するとみており、台湾に進出している日本企業で組織する「日本工商会」も馬政権のECFA推進に賛成を表明している。

中国の「善意」が焦点に

 我々は中国の農産品の輸出拡大を台湾に求めない──。ECFA調印に向けた第2回目の専門家実務会合が3月31日、4月1日の両日、台北郊外の桃園県で行われた。中国側代表の唐煒商務省台湾・香港・マカオ司長は報道陣に対してこう述べた。農産品をアーリーハーベスト(早期関税引き下げ)の対象としないとの考えを示したもので、台湾側はこれを中国側の善意と受け止めている。

 中台は2002年に同時に世界貿易機関(WTO)に加盟したが、中国側は台湾が中国の農産品を輸入制限していることを容認している。中国側は安価な農産品が台湾に大量に流入すれば、台湾の農家はひとたまりもないことを理解している。台湾の農民を敵に回せば、「祖国統一」の悲願を遠ざけることになり、国益に反するからにほかならない。