中台間の貿易自由化を柱とする経済協定「経済協力枠組み協定(ECFA)」の締結交渉が佳境に入っている。中台は2010年6月末までに中国で開く予定の窓口交流機関(台湾は海峡交流基金会、中国は海峡両岸関係協会)トップ会談での調印を目指しており、条文内容や協定スタートと同時に優先的に関税を撤廃する品目などについて詰めの協議を急いでいる。締結が順調にいけば、協定は2011年1月に発効される見通しだ。
親中派の台湾・馬英九政権は2008年5月の発足以来、中台間の「三通」(通信、通商、通航)や中国人観光客の受け入れ拡大をはじめとした両岸(中台)経済・貿易関係の正常化を進めてきた。
ECFA締結は「対中経済関係の正常化を通じて台湾経済を浮揚させる」とする馬総統の選挙公約の集大成として位置付けられる。
実現すれば、馬総統にとっては再選を目指す2012年の次期総統選での勝利に向けた重要なカードとなるばかりでなく、1949年の国共分断以降、中台間で結ばれる初めての制度的な経済・貿易交流の枠組みとなる。ECFAは中台関係において歴史的な転換点となる可能性を秘めている。
中国とASEANの連携強化で危機感
ECFAの正式名称は、Economic Cooperation Framework Agreement で、物品やサービス貿易の自由化を図る自由貿易協定(FTA)よりも、投資自由化や知的財産保護、2国間協力などを含む経済連携協定(EPA)に近い形態になる見通しだ。
馬政権はECFA締結が必要な理由として、東南アジア諸国連合(ASEAN)主要6カ国(タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシア、シンガポール、ブルネイ)と中国の間の自由貿易協定(ACFTA)が2010年1月1日に完成したことを挙げる。
台湾の輸出総額のうち中国(香港含む)向けは4割を占めるまでに拡大している。ASEANと中国間の関税がほぼゼロになったことは貿易競争上、不利に働くためだ。
台湾側は、対中輸出がASEANと競合する石油化学、鉄鋼、機械、自動車部品などを早期関税引き下げ措置(アーリーハーベスト)の対象とし、台湾企業に対する打撃を早期に排除したい考えだ。
北朝鮮と台湾だけが経済的に孤立
馬政権が危惧しているのはASEANと中国のACFTAだけではない。ASEANは日本とEPAを、韓国とはFTAを締結するなど、アジアで地域経済統合の動きが加速している。台湾も当然、FTA戦略を進め、国交締結国23カ国のうち、パナマなど中南米諸国5カ国との締結を実現した。しかし、これら5カ国との貿易額は全体の3%に過ぎず、貿易自由化による効果は極めて限定的だ。