日本の雇用形態の特徴として、「正社員があまりにも手厚く保護されている」ことがよく指摘される。確かに正社員と派遣社員の間で給与面、処遇面の「格差」は存在するし、ましてやパートやアルバイトで生計を立てている人は「フリーター」と呼ばれ、様々な面で社会的に不利な境遇に置かれている。
そうした状況に対して反旗を翻しているのが、人材派遣会社パソナグループの社長、南部靖之氏である。南部氏は「多様な働き方を選べる社会」の実現を唱え、働き方や雇用に関する固定化された価値観を覆そうとしている。
南部氏が一貫して雇用環境、労働環境に求めるものは「自由」だ。2009年8月に南部氏の長年の盟友である竹中平蔵氏がパソナグループの会長に就任したのも、「自由化」「規制緩和」というキーワードが2人を強く結び付けているのだろう。
この3月、南部氏と竹中氏は共編者となって『これから「働き方」はどうなるのか』(PHP研究所)という本を上梓した。南部氏、竹中氏のほか、経済学者の大阪大学の大竹文雄教授、千葉商科大学の島田晴雄学長、連合の元会長である鷲尾悦也氏らが寄稿し、それぞれの立場からこれからの労働環境や働き方を探っている。
南部氏がこの本で提示した「これからの働き方」とはどのようなものなのか。それはどうすれば実現できるのだろうか。
誰もが正社員になりたがっているわけではない
── 政府が労働者派遣法を見直し、「登録型派遣」(注:仕事がある期間だけ派遣会社と契約して派遣先で仕事をする形態)や「製造業派遣」を原則的に禁止する方向を打ち出しました。こうした規制強化の方向に警鐘を鳴らしていますね。
南部氏(以下、敬称略) 2004年に労働者派遣法が改正されて、製造業務への派遣が解禁となりました。しかし、その後「派遣切り」などが問題となって、「3年で契約が切れてしまうのは問題があるから派遣は禁止。全員を正社員にして雇え」と政府は言っています。
社会には確かにルールが必要です。でも、やはり基盤になるものは「自由」だと思います。労働市場にはもっと柔軟性を持たせるべきです。