商品先物や株、上場投資信託(ETF)などを1つの取引所で売買できる総合取引所の実現に向けて、東京工業品取引所などを所管する経済産業省が活発に動き始めた。取引所版の「ワン・ストップ・ショッピング」とも呼ばれ、投資家の利便性向上と市場活性化を訴える同省の鼻息は荒い。ただ東京証券取引所や他省庁は冷ややかで、実現への道のりは険しい。

経産省が金融機関に「逆陳情」

東京霞が関の経済産業省。日ごろの官・民の関係が逆転し、幹部が民間金融機関に商品先物に連動するETFの組成を「陳情」した

 「東工取に上場する商品先物の価格に連動するETFを作れませんか」。2009年秋、経産省幹部は大手銀行・証券会社系列の資産運用会社に対する異例の「逆陳情」を続けていた。ETFは、証券取引所で売買できる投資信託。海外市場の金や原油の価格に連動するETFはあったが、国内の商品先物に投資するETFは登場していなかった。

 同省の熱意に押されるように、野村アセットマネジメントが国内白金先物価格連動ETFを、みずほ投信投資顧問が国内金先物価格連動ETFを、2010年2月15日に大阪証券取引所に上場させた。

 インターネット取引の普及などで、株や為替(FX)投資の裾野は大きく広がったが、商品先物には抵抗感を感じる人が少なくないだろう。そこで、株価指数などで慣れ親しんでいるETFとすることで、個人投資家の商品投資へのハードルを下げようというのが狙いだ。時差のある海外と異なり、国内の商品先物の値動きを確認してからETFを売買することも可能だ。

 ETFを通じて資金が流れこむことで、貴金属先物市場が活性化すると期待される。また株とは異なる値動きをする商品先物に投資するETFは投資家層を広げるとみられ、大証側にもメリットは大きい。

 東証とは目と鼻の先にある東京証券会館で開かれた上場記念式典に出席した経産省の瀬戸比呂志商務流通審議官は、初の国内商品価格に連動するETFが実現したことに感無量の面持ちだった。「これまで商品と証券の市場連携は弱かった。証券界で活躍する関係者はETFを通じて商品先物市場に参画してほしい」と力強く語った。

 関係筋によると、今回の国内商品連動型ETFの実現は、経済産業省が目指す総合取引所構想に向けた第一弾なのだという。2010年7月、改正商品取引所法が本格施行されれば、商品取引所と証券取引所の相互乗り入れが可能になる。証取が商品市場を、あるいは商取が証券市場をそれぞれ開設することが可能になる。また持ち株会社方式による経営統合にも道が開かれる。