ものをつくるということは、元来、自発的なもので、音楽しかり、料理しかり、模型作りしかりで、そこには楽しみや刺激が潜んでいる。
だから開発や製造という仕事は、他の仕事にはない種類の歓びを伴っている、とおれは思うんだ。
だが、いくら好きな仕事、楽しい仕事でも、長時間、集中して根詰めていると物事の捉え方が一定の枠内に留まり、発想の拡がりがなくなり、考え方の融通が利かなくなったりするものだ。
そうなると、ひらめきというものが湧き出てきにくくなる。時間や努力、労力と成果が比例しないのがものづくりだが、おれは、開発で壁にぶち当たった時には、全然、仕事の縁がない人とたくさん話をすることにしているんだ。
饅頭屋のおやじとか、時計屋のオヤジとか、樽屋の親父とか。同業者じゃない人とうんと話をする。これって無駄話のようで、実は、知恵の蓄積になるんだよ。「こうやって、樽はつくるんだな」っていう具合にね。
仕事のリズムを完全に止めてはいけない
忙しい時、疲れた時でも、おれはあまり休憩をしない。そういう時は休むよりも人と打ち合わせを入れたりして気分転換をするんだ。そうすることで精神的な勢いというか気持ちの張りが維持できるから、仕事の能率は下がらない。
もし、仕事からまったく離れて頭と精神のリズムを完全に止めてしまったら、再びリズムを取り戻すのには時間がかかるもんだからね。
だって、そうだろ、高校生が大学受験で一生懸命勉強してても、受かった途端に勉強をやめて遊ぶから大学生がバカになるわけで・・・、大学に合格した後も、受験勉強の調子でぶっ続けで卒業まで学問をやれば、そいつは絶対にモノになっているはずだ。
若いうちは頭が柔らかいんだから、青春時代をつまらないことにつぎ込んでいたら時間の無駄っていうもんだ。