芸術家もそうだけど、職人っていうのも、自分がこさえたものだけでなく、生き方も作品みたいに個性があった方がいい。

 勉強もできて、親切で、仕事ができる、なんて万能である必要はないんだ。何か1つでいいから、人よりも抜きんでたこと、自信を持ってできることがあるといい。

 何にでも言えることだが、人間は人並み以上の得意技を持っていないと充実した人生を過ごすことは難しいからね。

 職人は年季を積むことで技が磨かれるから、「商い3年、飽きずに3年」っていうけど、最低、3年。超一流になるには20年はかかる。20年で一区切りだ。

 毎日、仕事に集中していると、そのうち次第に腕に自信がついてくる。そうなれば身体も自然に動くようになり、勘も働いてくるようになるものだ。

 ところが、毎日、同じことを、同じようにやって時間を消化していては、伸びるものも伸びない。日々の中に、改善できることや工夫できるものがある。それをするかしないかで、成長の度合いが全然違ってくるんだよ。意識を変えることは、自己という小さな存在を臨界へと導く手がかりなんだ。

誰だって限界を超えることは可能だ

 人っていうのは、もし可能なら限界を塗り替えたがるのは人類の歴史を見れば明らかで・・・。ノルウェーの探検家アムンセンは、自分が最初に南極点に立つために全てをなげうって命懸けで突き進んだし、ライト兄弟は世界で初めて機械で空を舞ったが、誰もできなかったことを最初に成し遂げたい、という欲求が原動力となったんだな。

 人間ってのは、「自分を向上させたい」という欲求を誰でも備えているけど、限界を超える人は、その強い意志だけじゃない。限界を超えようとする考え方の立ち位置そのものが、世の中の常識や人並みとはまるで違うものなんだ。