2009年、「民主党よ、お前は何者か」「続・民主党よ、お前は何者か」と題し、2度にわたって鳩山由紀夫民主党政権の問題点を指摘した。年末の予算編成作業でようやくマニフェストで掲げた一部公約を撤回するなどの変化も表れているが、それでもなお、この政権に内在する危険な要素から目を離せない状況は続いている。
鳩山政権はこの1年、内外の懸案にどう取り組むだろうか。普天間問題、東アジア共同体構想、気候変動問題を題材に3回にわたって展望したい。
普天間問題が難航するのは、社民党ファクターが主因ではない
3党連立政権にとって最大のヤマ場は5月に訪れると見る向きが少なくない。鳩山首相が、米軍普天間飛行場の移設問題について、それまでに結論を出すと明言したからである。
社民党は、自民党政権下で米国と合意したグアムへの海兵隊8000人移転にとどまらず、普天間基地そのものをグアムにすべて移転することを追求すべきだと主張している。一方、米国は終始一貫して「現行計画が唯一実現可能な案であり、他の選択肢はない」と繰り返している。
鳩山首相が言及する「沖縄の思い」については、「すべての米軍基地撤去が県民の声だ」という人もいれば、「革新陣営はそうかもしれないが、声なき声は違う」という人もいるので、ひとまず脇に置くとしても、少なくとも、社民党と米国を同時に納得させられる妙案があるとは思えない。
このため、外務・防衛当局には「5月までに予算と予算関連法案を通してしまい、現行計画に代わる案が見つからない以上、現行計画でいくしかない、それで社民党が政権離脱しても構わない、というふうに話を持っていく腹づもりではないか」という観測が広がっている。
だが、この見方は楽観的過ぎる。社民党が普天間問題決着を阻む唯一の要因だとしたら、この年末に自民党から相次いで離党した参院議員がいるのだから、その中の1人でも取り込めば、社民党に参院のキャスチングボートを握られている状態は簡単に解消できるからだ。
「民主党よ、お前は何者か」で指摘した通り、普天間問題が難航するのは、社民党ファクターが主因ではなく、鳩山首相や岡田克也外相ら民主党に内在する左派・リベラル志向のためだと考えるべきだ。
実態は「脱戦後」の流れに対する左派・リベラル勢力の巻き返し
民主党の左派・リベラル志向についてどうとらえたらよいか。筆者は、1990年代に進んだ保守・現実主義の立場からの「脱戦後」の流れに対する、左派・リベラル勢力による巻き返し現象だと見ている。
「脱戦後」のきっかけは、1990年の湾岸危機だ。時の海部俊樹内閣は、米国から多国籍軍への後方支援として自衛隊の派遣を求められながら、自衛隊派遣に失敗した。
「武力行使と一体化したと見なされる行為は憲法上できない」という憲法9条解釈に縛られ、当時の小沢一郎自民党幹事長が主導した国連平和協力法案が廃案に追い込まれたからだ。海部内閣は代わりに130億ドルの財政支援を行ったものの、米国からは「トゥーリトル、トゥーレイト」(小さすぎ、遅すぎる)、「キャッシュディスペンサー」(現金引き出し機)と酷評された。