従来型のテレビ放送事業に限界
関係業界が、これほど、米国版ワンセグに熱を入れているのは、現在のテレビ放送のビジネスモデルに限界を感じているからにほかならない。さらに、携帯電話関連の技術開発大手のクアルコム(Qualcomm)は、携帯電話向けテレビ配信技術の「メディアフロー(MediaFLO)」で大幅に先行していることから、対抗上、ATSC-M/H標準のもとに放送事業者や関連メーカーが集結することが得策と考えたともみられる。
地デジ移行により、放送各社は、アナログ放送用に使用していた電波を返還している。この電波は、新たな無線通信サービス事業をスタートさせることを前提に、オークション(競売)で、通信や衛星事業者などに売却されている。ATSC方式の携帯電話向け放送に参入することで、放送各社もオークションに参加することができる。
地デジ移行後のテレビ放送事業者にとって一番理想的なのは、「ローカル放送局が力を得ることができる」という点にある。
DTV時代というテレビ放送の新局面で、ネットワーク、およびローカルテレビ局が、移動中の視聴者に番組を効率的に届けるための、新たな機会が生まれた。これにより、特に、ローカルテレビ放送局では、若い世代の視聴者を獲得する可能性が広がり、また災害関連をはじめとする、あらゆる緊急情報をローカルテレビ視聴者に向けて発信できることとなる。また、ローカルニュースやその他の番組を全米の各放送局に提供できることも強みになると考えている。
メディア連合でコスト圧縮を
2009年12月2日には、全米で複数のテレビ局を所有・経営している、代表的なメディアオーナーシップ会社のガネット(Gannett)、メディアゼネラル(Media General)、ハーストテレビ(Hearst Television)、コックス(Cox)、ポスト・ニューズウィーク(Post-Newsweek)など9社が、ジョイントベンチャーの「パールプロジェクト(Pearl Project)」をスタートさせた。
