25日の外為市場で、ドル安が一段と進行。ユーロ/ドル相場が1.51ドル台に乗せるなどしたほか、対円でもドルを売る動きが強まった。ロンドン市場で87円台に突入し、ニューヨーク市場では一時87.21円まで記録した。今年の円高ドル安ピークは、1月21日に記録した87.10円。このラインを抜いての一段の円高進行が、十分視野に入ってきた。筆者は85円までの円高が年明け1月頃までの間に実現すると予想している。
このタイミングでドル安(あるいは)円高が加速した原因は、以下のようなものである。
(1)24日に発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録・経済見通しの内容から、米国の超低金利政策が長期化するだろうという見通しが強まり、ドル売り安心感につながったこと(11月25日作成「長期トレンド完全回帰に約5~6年」参照)。
(2)同じく米FOMC議事録に、ドル安の進行はこれまでのところ「秩序立っている(orderly)」という参加者の認識が書かれており、米国によるドル安容認の思惑を強めたこと。
(3)ロシア中央銀行高官が外貨準備の運用先多様化を進めている中でカナダドルを加える準備をしていると語ったことが、ドル離れの連想につながったこと。
(4)米国の感謝祭休暇を控えて商いが薄くなり、仕掛け的なドル売りのインパクトが大きくなりやすかったこと。
(5)25日に発表された日本の10月の貿易統計が+8071億円となり、昨年9月の「リーマン・ショック」以降で最大の黒字幅になったこと。
足元での円高進行を受けて、藤井裕久財務相は25日夜、「異常に動いた時はそれなりの対応をしなければいけない」「円の問題ではない。ドル安から来ているのは間違いない」「(急激な値動きかどうかは)具体的には申し上げかねる」「一般論として急激な動きの時はまず慎重に見守る」と述べた。また、ブルームバーグのインタビューでは「水準について論じることは一切いけない」とも語った。
すでに言い尽くされてきたことだが、円高の進行は、(1)輸出主導の日本の景気回復の道筋を狭めること(日本の主要輸出企業の今期想定レートは90円前後)、(2)輸入品の価格下落を通じてデフレ圧力を強めること、の両面から日本の経済を圧迫する要因であり、日銀の超低金利政策が一層長引く、ないしは追加緩和策の検討を迫られる可能性が生じてくることも加わって、いわば3重に、長期金利の低下要因となる。