今回から4回にわたって、中国の自動車市場と自動車産業の現状をリポートする。
私が初めて中国の自動車事情を現地で取材したのは1994年だった。それ以前は「日本の自動車メーカーが活動する国の1つ」として関係者から事情を聞く程度だった。足しげく中国へ通うようになったのは99年からであり、その後の12年間でそこそこの取材人脈を築くことができた。
このシリーズでは、一般論ではなく私の目で見た中国自動車論を、日本ではあまり語られることのない事柄を中心に展開してみたい。
GT-Rが好きな理由は「とにかく速いじゃないですか」
「ボクにとって日産GT-Rは、神様のような存在です」と、若い彼はBMW530Liを運転しながら言った。
彼は中国人であり、中国の老舗自動車雑誌「汽車之友」の編集記者である。私は5年ほど前から「汽車之友」にコラムを寄稿しており、その日は北京市郊外にある飛行場を使っての試乗と撮影からの帰路だった。
「GT-Rのどこが好きなの?」
私は彼に尋ねた。
「とにかく速いじゃないですか。フェラーリの方が速そうに見えるけれど、GT-Rは本当に速い。しかもハイテクで速さを手に入れているところが好きです」
訊けば、彼は中国本土にGT-Rが正式輸入される以前に香港で試乗したのを皮切りに、何度かサーキットでもGT-Rを走らせたことがあるという。
この日、「汽車之友」のスタッフは大学教授や中国の著名なレーシングドライバーの皆さん、そして私を招き、BMWをはじめジャガーXJ、フォルクスワーゲン(VW)パサート、トヨタのレクサスRX、さらには中国国内メーカー車など中国で販売されている十数台のモデルを試乗のために用意してくれていた。
飛行場を借り切り、広い滑走路とランプウェイにコースをつくり、様々なテスト走行を行える環境だった。そして、「汽車之友」のスタッフもテスト試乗を存分に楽しんでいたようだった。