メタボなおなかは気になるけれど、大好きな揚げ物はやめられない――。そんな矛盾する消費者心理を上手にすくい上げたヒット商品、花王の「エコナ」シリーズが、市場から姿を消した。
「エコナクッキングオイル」は1999年発売。食用油としては初の「特定保健用食品(トクホ)」の認定を受け、中高年層を中心に高い支持を得ていた。発売から10年目を迎えた2008年度は、シリーズで約200億円を売り上げた花王の看板商品の1つだ。
しかし、発がん性物質に変化する恐れがある「グリシドール脂肪酸エステル」が、一般食用油より多く含まれていることが判明。花王は9月にエコナ関連商品の出荷を停止、消費者庁がトクホの認定についての再審査を決めた10月9日、認定を自主返上した。
瑕疵は無いのに自主返上に追いこまれた花王
「グリシドール脂肪酸エステル」そのものの発がん性は、これまでのところ報告されていない。欧州の研究機関が今年に入って、体内の酵素などによって、グリシドール脂肪酸エステルが、発がんの危険性ありと分類される「グリシドール」に変化する恐れについて指摘したのが、問題の発端だ。
ただ、グリシドールへの変化がどのような条件下で発生するのか、エステルの摂取により動物だけでなく実際に人体でも発がんするのか、どのぐらいの含有で発がんに至るのか、といった詳しいメカニズムは解明されていない。
花王は、エコナを製品化する課程で実施した安全試験で「発がん性などに問題はない」との結果を得ている。しかし、改めてグリシドール脂肪酸エステルの含有を調べたところ、通常の食用油と比べ10~182倍含まれていることが7月に判明したため、社内で対応を協議した上で、出荷停止を決めた。